本
関東地方に30年弱暮らしているので、西武/京王/京急の項が興味深かった。後半の西日本の項目では、阪急創設者/小林一三の独創性を、阪神グループと比較することで、わかりやすく手ほどきしていてよい。近鉄の存在感についての強調が意外。ライトな鉄道ファン…
獄につながれ、これ幸い勉強ができると嬉々として振舞う変人の日記。本書では省かれた独房での己を律する忍耐と努力があったのだろうが、基本的には雑事にかまけず難解な思想書ばかり読んでいる強靱な精神に驚き呆れる。筆者が役人の柄に収まる個性でなかっ…
シーナ・ワールド三部作の続篇。灰汁と可児と鼻裂の三人があやしい砲艦でポリマー漂う北東アジア地域らしい海域をあてどなく旅する。彼らの生業は・・・(略)。単純に続篇が読めることがうれしい。ぜひまた別の物語で彼らと出会いたいものだ。
本邦の報道業界の健全さを損なっている記者クラブを批判する一冊。日本独特のモラルコミュニティである「世間」がマスコミでは根強く残っていることがよく分かる。記者クラブの功罪についてもう少しバランス良く紹介すべきだろう。罪についてはやや冗長で、…
政治にまつわる事柄の説明だけではなく“共和党的なるもの”“民主党的なるもの”を米国の文化から掬い出し、分析と紹介を試みているので学生や社会人にも親しみやすいだろう。特に第5章の政策論は説得力があり読み応えあり。第6章は事情通の楽観論の趣。
融通無碍とはこのことだ。とても良いファンが変人作家と対話してそれがひとつの論になっているかのように思えるのが本書の不思議さだ。橋本のあとがきが本書の見事な要約となっている。橋本ファン、内田ファン、その両者のファン、言葉を遣うことに興味ある…
突っ込みどころとうなづけるところがいい具合にミックスされている戦略的(?)な一冊。例えば第5章のエヴァンゲリオンとオウム真理教という2つの現象をグノーシスを通して考えるのは、文系学生の卒論の参考になりそうな丁寧な構成と、適度な強引さがある。また…
大瀧詠一や山下達郎や岡林信康とここまで渡り合えるのは凄いね。民生との対談が霞んでしまった。
チェコの神学者フロマートカに強烈に惹かれていく学究生活と同時並行で、1980年代前半、同志社大学神学部内の自治活動に勤しむ変わり者の濃密な青春記。前半の浦和高校時代の描写は1970年代後半の東欧旅行記が面白い。後半の大学時代の描写には業の深い友人…
極東軍事裁判におけるパール判事の判決の長所短所をつぶさに拾い上げ解説する対談本。"保守"の定義と近代主義の関係、また世界連邦論に収斂するようなパールの法哲学と道徳観の理解のために、ケルゼンの純粋法学理論とその問題点を明確に解きほぐす後半は、…
国際的な未承認国家(周辺国における実質的なロシヤの出先地域)として紹介されている沿ドニエストル、ナゴルノ=カラバフなどのエピソードを通じてかの国が周辺国(旧衛星国)に政治的・経済的に圧力を加えており、基本的にはソ連時代から変わらない強権的…
本邦が朝鮮戦争やベトナム戦争にいかにかかわり発展したか述べる対談本。"歴史"を知らない若者にとって啓蒙的で役に立つ。ただし小森の発言は傾向として煽動的かつ陰謀史観が垣間見え、活動家らしさは頷けても、研究者としての冷静さには疑問が残る(対談形…
ドストエフスキーやチェーホフ、カフカ、セルバンテスの諸作品を通して、自身の文学について語る一冊。勉強不足で分からない作品が多い。創作をするひとの為になりそう。「何かを十全に信じるということは滑稽である」というテーゼ(懐疑)が、氏の作品に通…
若さのほとばしる正論。言葉遣いはやや冗長。読了して世代論批判をする世代というメタな批判がすぐ思い付いてしまった(立論する気はないけど)。ヒョーロン(論壇)の政治性や煽情主義を批判するのは良いんだが、あなたもそこで生きていくつもりじゃないの?…
第1〜3章は宮川淳の原理的考察、平岡正明の直感的考察、構造的考察(蓮実独自のレトリック)とそれぞれ特徴づけられていて実際に批評の教科書として使用できそうだ。生井英考の回は欠席したので新鮮。吉田健一の回は、講義ではなかなか面白かったが、書籍化…
日本知識人による自治主義への誤解が象徴するように、時代がしばしば理性とほとんど無縁に進むことが、めまいと共に読み手の臓腑にしみじみとたたき込まれてくる。大日本帝国の植民地政策は官僚の既得権争いに終始しており、二枚舌どころか三枚舌、四枚舌の…