ひとりで酒を

utubo2003-04-28

酒が嫌いだ。酒を飲むくらいなら、おなかいっぱいご飯を食べたほうがいいと強く思う。


数年前に、ある友人と新宿で飲み歩いたことがあった。さしで3軒まわり、ついでに友人の
家の近所のバーにまで転がり込んで、熱燗だったか焼酎だったかを飲んだ。都合4軒、一晩でなんと
1万円は使ったのである。1万円といえば、中古CD屋でがんばれば、アルバムが7,8枚は買える金額だ。
学食のあのまずいたぬきうどんなら300杯はいける計算になる。なんとももったいないことをした。


たぶん、ぼくが酒を嫌いなのは、一重に大食らいであることが理由だと思う。酒を飲んでは満足
できず、必ず家に帰ってご飯を食べる、というのがかつてよくあった。ところがあるとき、失恋を
きっかけに、お酒のありがたみが分かるようになった。「星の王子さま」に出てくるあのドランカーの
気持ちがちょっぴりわかるようになった。酒の席で飲まないで、昼間誰も居ない家で酒を飲む毎日に
背徳的な笑みを覚えたりもした。自己から逃避するだけのためのいちばんたちの悪い酒の飲み方である。
これを続けるのは実際つらい。お金も無いし、アル中には程遠い飲み方なのだが、酒を飲んでいると
かなり空しくなってくる。そこでさらに酒を飲む。するとますます空しくなってくる。甘美な妄想に
逃げることもできずに、その空しさをさらにまぎらわそうと酒を飲む。やがて寝る。こんな生活を半年も
続けていたら、6キロは太ってしまった。50キロ台で安定していた体重が一気に60数キロになったのだ。


さすがに酒に逃げつづけてばかりいるわけにもいかず、なんとか日常に復帰はしたものの、去年の
夏、またわりとつらいことがあって(苦笑)お酒に逃げていた。これまた恋がらみであった。今思うと
なんとも笑えてそれまた哀しいのだが、渦中においては行き先をわかりつつも苦しむというアホな展開が、
ぼくの場合必定である。恋するわが身の虜になる、いわゆる自縄自縛状態である。現実主義の人間には
きっと鼻もひっかけられない情けないありさまだが、少しは進歩があった。ビールで酔うのはやめて
もうすこし手軽に酔えるようにとビールからウィスキーに切り替えたのである(苦笑)。わずかに現実的な
選択をとったとはいえ、現実から逃避することに変わりは無い。ぼくはさらに現実的な選択肢を選ぶことに
した。彼女と会う機会が無ければ恋に悩むこともなくなるだろうと。ウィスキーを飲まないでも日常が
送れるようになりそれはそれでよかったようだ。


不毛なナルシズムを延々と開陳しているようでいささか恐縮だけれども、この春もビールばかり飲んでおり
(また現実逃避だ!)なんと体重は67キロの大台に達してしまった。ちょっと腹が出てきたな、と思って
体重計に乗ってみたら、そのすぐれものが弾き出した体脂肪率、なんと21パーセント!22歳の男子としては
恥ずべき肥満体である!というわけで見事隠れ肥満の仲間入りを果たしたぼくは、すこしは現実と向き合う
ことにつとめて、ビールを飲むのを休むことにしたのである。逃避にも限度があるし、デブにはなりたくない。


さて以上のように、ぼくの酒とのつきあいというのはいささか中途半端なわたくしじしんに振りまわされた
バカらしい数々のストーリーに彩られており、機会あらば「お酒さん、ノンリスペクタブルなわたくしを
どうかおゆるしください」と謝罪したいくらいの気分なのだが、実際は酒に謝るのではなくて、もうすこし
自分の軟弱なエゴを鍛えるべきなのだろうと思った次第である。これホントよ。


ちなみに煙草に関してもくだらないエピソードがひとくさりあるのだけれど、これはまたいつか
機会を改めて…話すこともないけど。ただ、煙草とのつきあいは約1年で終止符を打つことが出来た。
景気の低迷と嫌煙指向が高まるこの頃、駅のホームで退屈そうな顔でスパスパやっている不健康
ガールズが見れなくなるようで、多少残念でもなくないが、これまたどうでもいいといえば
どうでもいい話だ。ただ、ぼくはどうでもいいといえばどうでもいい話がわりと好きである。