対談:エキゾティシズムとモダニズム



I 20世紀に入りまして、閉塞的なアートを賦活させるために、エキゾチシズムを用いるということが西欧では流行しますが、代表的なものとしては、1931年のパリで開催された国際植民地博があります。同様の催しはロンドン、アムステルダムなどでもありました。このパリでの植民地博については、パトリシア・モルトンの著作(『パリ植民地博覧会―オリエンタリズムの欲望と表象』)でもつぶさに述べられていますけれど、バーセルヌの森に突然、アンコールワットイスラムのモスクが現れて、原住民を呼んでしまって、彼らにそこで生活させてしまう。生活そのものを持ち込むということで、動物、原住民、西洋人というヒエラルキーを具現化して、西洋文明の絶対的優位を示そうとしましたが、それが裏目に出てしまいます。


K モダニズムですね。「文明」と「未開」の二項対立という。


I はい。20世紀の二つの大戦間を通して、旧宗主国に旧植民地人が大量に流入して確固たる西洋文明みたいなものは崩れていきます。


K パリ万博にかんしては当時撮影された夜会のフィルムが大量に遺されていて、蛮族の踊りを楽しむ白人たちが映っています。ぼくは今回、ブエノスアイレス、東京、パリという三つの都市で『南米のエリザベス・テイラー』を作ったわけですけれど、歌手のカヒミ・カリイさんという方とパリに行きまして、彼女の歌うトラックをパリで録音しています。これは別にパリで録音する必要というのはないものだけど、パリの空気のようなものが音楽に残るかな、という試みですね。