矢口史靖監督 / スウィングガールズ

スウィングガールズ スタンダード・エディション [DVD]


米沢弁がなんだか嘘っぽかっだだす。
んだんだ。
でもええがんじのえいがだっだだす。
んだんだ。
えがっだえがっだ。えーがだっだ。




 いろんな意味でファンタスティックな映画だ。喜劇的な要素を強調するカットが多かったので、そこらへんに監督の「青春」を語る「照れ」があるのだな、と読んだのだけれど、その「照れ」が少し邪魔かなあ、と思わなくも無かった。あるいはわたしにユーモアのセンスがかけているのかもしれない。
 監督の矢口史靖(しのぶ、と読ませるらしい)は1967年(昭和42年)生まれ。まだ40前。若いな〜。「青春」に自己言及する方法として「照れ」を用いたのかもしれない。用いるほか、術がなかったのかもしれない。まあ、それは良いんだけれど。


 わたしもかつてブラスバンド部員の端くれだったので、編集美化された過去の「記憶」を探り当てて、「甘酸っぱい思い出に浸る」という選択肢を採ることもできたのだけど、最後の音楽祭のステージでの演奏シーンが良かった。監督が根本から音楽の力を信じているパワーを見せつけられた感があった。「音楽」を信じているのでなかったら、おそらく「映画」を信じているのだろう。もちろん、ひじょうに企画力というか、マーケティングとからんだ用意周到さも、その裏にある感じがして、監督ひとりの「映画」という感じはしなかったけれど、そりゃ商売だから否定しても詮無いことだ。
 簡単に云うと、出演者がみな練習を積んで、演奏している場面でアンブシュアがきちんとしているとか、きちんと音を出しているのが分かる、ってところが、音楽映画においては肝で、そこがきちんと押さえられているのは、当たり前のことのようでとてもえらい、ということです(『ブラス! [DVD]』という英国の映画では、とても重要なカットで、ただマウスピースを口唇に押し当てているだけだったから、だいぶ失望した)。
 蛇足。スウィングジャズの隠微で退廃で破壊的なグルーヴが、だいぶ殺菌されてしまっているのは、愛敬というか、仕方ないんだな。というか、「スウィングジャズの隠微で退廃で破滅的なグルーヴ」という文脈が、いまの日本ではほとんど有効でないのかもしれない。世界各国の好事家の脳内ではおそらく有効だろう。