幼少期/青年期の音楽体験

  • 青春時代に好きだった曲、好きだったアイドルなんていうのは良く訊かれる。一番最初に買ったレコードはフォーク・クルセーダーズの「帰ってきたヨッパライ」という曲。この曲は当時大ヒットした。

♪フォーク・クルセーダーズ「帰って来たヨッバライ」*1
当時は皆この曲を普通に聴いて喜んでいたけれど、今聴くと、なんともいえないヤバさがあることに気づく。この曲の前衛性は色褪せていないし、天国に行ったら「神様に帰れ」といわれて、蘇ってしまうっていうところもすごい。このシングルは1968年にリリースされたので、当時5歳だった自分で買えたわけではなく、16歳上の兄(菊地秀行)にねだって、買ってきてもらった。

  • 物心付いたとき、兄はすでに上京しており、主の居ない部屋があった。館長の居ない透明なミュージアムという感じ、この番組名にこじつけていうわけではないけど、兄の部屋にはそんな感じがあった。

当時の大学生が上京して住めるのは3畳一間のアパートしかないので、オタク第1世代の兄の大量のコレクションのうち、ほとんどが、実家に残されていた。天井にはマリリン・モンローのポスターが貼られていたのを覚えている。3人娘(園まり…兄が好きだった)、クレイジーキャッツ、西部劇。幼稚園くらいから、小学生くらいまで、意味もわからず兄の部屋でそのコレクションに浸るのが至福のひと時だった。友達がドリフターズ、って言っているときに、ぼくマヒナスターズみたいな(笑)。当時からムード歌謡が大好きで、それが今の自分のベーシックな部分に根付いている。ソロアルバムにもそれが現れていると思う。青春期で無くって幼少期の話になってしまった(笑)。
♪園まり「逢いたくて逢いたくて」

  • 青春期。ジャズとの出会いというのもよく聞かれることなのだけど、明確に覚えていない。ただ、映画が好きだったので、50年代仏ヌーベルバーグでよくジャズが使われていたから、そこから入ったのだろう。ジャズジャイアンツのうちのひとり、マイルズ・デイヴィスが『死刑台のエレベーター』の音楽をやったりしていた。演歌が嫌いで、ラウンジ風のムード歌謡が大好きで、ジャズにはすっと入っていけた。スーツを着てクールでシックにアコースティックジャズを演奏するという時代から、アフロヘアで、ヒッピーみたいなファッションに、ロックやファンクの影響を取り入れていったいわゆるエレクトリック・マイルズの時期、DCPRGの音楽にも大きな影響を与えたマイルズ・デイヴィスの'72年の作品『On The Corner』から「On The Corner」を聴きましょう。

マイルズ・デイヴィス「オン・ザ・コーナー」*2

*1:アルバム『ハレンチ』収録

*2:アルバム『オン・ザ・コーナー』収録