2018年 あれ読んだこれ読んだ ―さえきかずひこの場合

2018年、ことし一年間に読んだ本の中から素晴らしいと感じたものを10作品選んでみました。

 

  1. リュディガー・ザフランスキー『ショーペンハウアー』(法政大学出版局
  2. 仲正昌樹『「自由」は定義できるか』(バジリコ)
  3. 冨原眞弓『シモーヌ・ヴェイユ』(岩波書店
  4. セーレン・キルケゴール死に至る病』(講談社学術文庫
  5. エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』(東京創元社
  6. ジェルジ・ルカーチ実存主義マルクス主義か』(岩波書店
  7. 『定本 柄谷行人文学論集』(岩波書店
  8. 鈴木順子『シモーヌ・ヴェイユ 「犠牲」の思想』(藤原書店
  9. カール・レーヴィットヘーゲルからニーチェへ』(上下・岩波文庫
  10. 轟孝夫『ハイデガー存在と時間」入門』(講談社現代新書

 

ショーペンハウアー』は哲学史家ザフランスキーによるショーペンハウアーの評伝で、彼の渡り歩いたドイツの町々が実に魅力的に描かれていて印象的でした。『「自由」は定義できるか』は自由という考えを定義することの難しさについて書かれた本です。冨原さんの『シモーヌ・ヴェイユ』も34年という短い生涯を燃やし尽くしたヴェイユについての優れた評伝です。キルケゴールの『死に至る病』は気鋭の哲学研究者、鈴木祐丞さんによる2017年の翻訳。読みやすいです。フロムの『自由からの逃走』はドイツにおいてルターの信仰義認論がナチズムを招来する思想的準備を行ったと論じるとても興味深い示唆に富む一冊。政治と宗教の関係を考える上で有用だと思います。ルカーチ実存主義マルクス主義か』は古い本ですが、ルカーチマルクス主義の立場から、フランスの実存主義者(サルトルボーヴォワールメルロ=ポンティ)を批判している本で実存哲学の系譜について考えているぼくにとって読む価値がありました。『定本 柄谷行人文学論集』は柄谷の文学批評についてまとめたものですが、漱石について論じているものがとても面白かったです。鈴木順子『シモーヌ・ヴェイユ 「犠牲」の思想』は多面的な活躍をしたヴェイユの根底に「犠牲」という思想を見出し、彼女の一貫した生きる姿勢をあぶりだした現代日本ヴェイユ研究の白眉ともいえる一冊です。カール・レーヴィットヘーゲルからニーチェへ』は19世紀の哲学において次第に崩壊してゆくヘーゲル思想の移り変わりが活写されています。三島憲一さんによる翻訳も素晴らしい!轟孝夫『ハイデガー存在と時間」入門』はハイデガーの思索がキリスト教教義学から始まったことを踏まえたうえで『存在と時間』を解釈していくきわめて意欲的な入門書です。この10冊以外にも心に残った本はもちろん幾冊もあるのですが、それらの話もしているとなかなか終わりそうにないので、このへんで。

あ、ちなみに2017年分の「あれ読んだこれ読んだ」を読みたい方はこちら。