ためしに遺書を書いてみた(2020年4月版)*注意* 余命2週間でも、自殺するわけでもありません

親愛なるみなさんへ

 

このたび、大変残念ですが、余命2週間と主治医から診断されました。まだフッサールもカントもプラトンもほとんど読めていないので、この世からお別れするのは非常に悔しいのですが、そもそも永遠に生きることはできない相談ですので、比較的意識も明瞭なうちにいまの思いを書いておきます。

 

TwitterなどのSNSで親しく接してくださった方々、どうもありがとうございました。とても楽しかったです。時には失礼なこと・不快なことも申し上げたと思います。その点については申し訳ありません。ぼくが死出の旅に出たあとも、当面混迷の乱世が続くようですが、いつも自分の見ている液晶画面のむこうには、自分と同じ血の通った人が画面を見つめているのだと肝に銘じつつ、比較的心和むインターネットライフを送って頂きたいと念じて止みません。

SNSではもとより、オフラインの世界で交友を続けてくださった友人・知人のみなさん、長い間の友情に感謝しています。いささか性格に難のあるぼくにいつも親切にしてくださったことはぼくの心に深く刻まれています。みなさんが生きていくうえで、これからもたくさんの困難が待ち受けていると思います。時には徹底的に打ちひしがれ、天を仰ぐことすらできない苦難を感じるときもあるでしょう。それがある程度の長さ続けば、死んでしまおうかと悩むこともあるかと思います。でも、ぼくはみなさんにはなるべく生き延びてほしいと願っています。それがどんなに困難に満ちたものであっても、自殺すると周りの人がわりと。場合によってはかなり長い時間、苦悩し続けることになります。もちろんそんなことをいっても、自殺を選ぶ人もいるとは思うのですが、つらくてつらくて大変でも、たまには笑って、長い人生をなんとか、どうにかして生き延びていってください。これがぼくからの身勝手きわまるお願いです。

SBS読書会に参加してくださったみなさんにはとくにこの場で深く感謝します。2010年から始まったぼくの読書会に集ってくださったみなさんと、同じ本を読み、感想を語り合い、多面的な観点から議論することができたのでは、ぼくにとって何よりの喜びであり、人生におけるささやかな救いでもありました。皆さんの機知と、変わらぬ読書への熱心さをいっそう高めて、引き続き読書会を続けていってもらえれば、ぼくにとってこれほどうれしいことはありません。いつかきっと終わってしまう営みだとは思いますが、これからもSBSをどうぞよろしくお願いします。

最後に、父さん母さんへ。文字通り不肖の息子で、多大な苦労をかけましたね。お疲れさまでした。ぼくもまったく本意ではないのですが、先にお墓に入ることになってしまいました。正直悔しいです。父さん母さんも、とてもつらくて、悔しいと思います。その思いも、じきに分かち合えなくなってしまうことは本当に心苦しいのですが、ひどいつらさは時間がある程度解決してくれます。もちろん39歳の息子を失ってしまった悲嘆が霧消することはけっしてないでしょう。ずっとずっと悲しいでしょう。でも、人がいつ死んでしまうかはどうしようもないことです。ですから、ぼくのことをたまには思い出しながら、できれば穏やかで静かな老後をゆっくりと歩んでいってください。葬式はできるだけ簡素なかたちでお願いします。なるべく音楽をかけてほしいので、かけてもらえるか分かりませんが、選曲表を別途添付します。ふたりともつらくてたまらないので音楽どころではないと推察しています。けれど、申し訳ないのですが、ほんとうに最後の、最期のぼくのわがままですので、どうかよろしくお願いします。長いあいだお世話になりました。くれぐれもからだに気を付けてくださいね。それでは、さようなら。

2020年4月
さえきかずひこ 記