4月前半に観た/観直した映画12本の感想まとめ

  1. 4月1日、大島渚監督『東京战争戦後秘話』(1970年)を観た。1969年4月28日以降の東京を舞台に映画の制作を通じて闘争する男=元木の心象風景が描かれる。闘争は行き詰まり、元木は自殺するが明らかに当時の大島監督の内面が投影されている。音楽は武満徹。主演女優の岩崎恵美子はおそらくアングラ演劇から引っ張ってきたのではないか。美人ではないが、存在感があってとても良い。

  2. 同日、ケント・ジョーンズ監督『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年)を観た。素晴らしい!80分という短さだが非常に濃密で面白くしかも無駄が無い。後半では『めまい』と『サイコ』を熱心に評するスコセッシが印象的。ヒッチコック作品には秩序があり、そして恐怖が美的に描かれる。ヒッチコックファンにお薦め!

  3. 4月3日、ハワード・ホークス監督『三つ数えろ』(1946年)を観た。チャンドラーの『大いなる眠り』を映画化して名高いがプロットが極度に複雑すぎて理解できなかった。脚本にはフォークナーも加わっているがどの程度関与したのか気になる。セリフ回しがいちいち痺れるが、構成は冗長で破綻しているといっていい。いずれ原作を読んでみたい。

  4. 4月4日、マイケル・カーティス監督『カサブランカ』(1942年)を観た。舞台はヴィシー政府支配下の仏領モロッコ。製作当時の時局を反映した自由フランス&アメリカ=連合国の正義を鼓舞する、反ナチ的かつ愛国的な映画。回想シーンでボガートとパリで恋に落ちた瞬間を演じるバーグマンの表情が生き生きとして美しい。

  5. 同日、パー・フライ監督『ストックホルムでワルツを』(原題 Monica Z/2013年)を観た。スウェーデンの田舎町でシングルマザーとして娘を育てながら父との確執に悩みながらも最終的にNYでビル・エヴァンスと共演を果たすまでの歌手モニカ・ゼタールンドの半生を描く評伝的作品。娘役の女の子が可愛かった。

  6. 4月6日、押井守監督『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)を観直した。高校時代にレンタルのVHSで観た以来だったので内容はすっかり忘れていたが、二二六事件と三島由紀夫に対するオマージュ(と同時にそれらに対する批評でもある)を感じた。荒川茂樹の造型モデルは明らかにサルトルだと思う。

  7. 4月7日、大友克洋総監督『MEMORIES』(1995年)を観直した。大変面白かった!!公開当時、父と二人で池袋の映画館で観た以来だったのだが、「彼女の想いで」は作画と演出が素晴らしいし、「最臭兵器」は脚本と音楽が素晴らしく大笑いしながら観た。観たあと晴れ晴れとした気持ちになれるのでお薦めです!

  8. 4月8日、ボブ・フォッシー監督『オール・ザット・ジャズ』(1979年)を観た。傑作!!ブロードウェイミュージカルの監督として八面六臂の活躍を続ける主人公は、虚無と孤独の人だった。彼は酒とタバコと覚醒剤、女に溺れ過労で倒れる。その死にゆく内面を現代ミュージカルで表現していく70分過ぎからは目が離せない!

  9. 同日、グレッグ"フレディー"カマリエ監督『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』(2013年)を観た。米国大衆音楽史のファンキーを支えたヘッドアレンジ集団がいかに生まれたかを、リック・ホールの設立した録音スタジオFAMEとそこから分かれたマッスルショールズサウンドスタジオの面々の証言を中心に描く。

  10. 4月10日、マーク・サンドリッチ監督『スイング・ホテル』(1942年)を観た。アステアとクロスビーがマージョリー・レイノルズを取り合う三角関係のプロットを軸に、歌とダンス、アーヴィン・バーリンのスイング音楽を堪能できる娯楽作。戦時下の製作なので自由を勝ち取ることの素晴らしさが賞賛されるのはご愛敬。

  11. 4月11日、島耕二監督『銀座カンカン娘』(1949年)を観た。高峰秀子笠置シヅ子灰田勝彦、岸井明、浦辺粂子そして全盛期の五代目志ん生らが出演する喜劇調ミュージカル風の作品。銀座で灰田がチンピラに殴られるシーンの背景が48年公開『鉄のカーテン』のポスターで印象に残る。とにかく若かりし時分のデコちゃんがかわいい。

  12. 4月14日、大林宣彦監督『異人たちとの夏』(1988年)を観た。浅草は異界への入口。そこで風間杜夫は28年前に事故死した両親に再会。また離婚して妻子と別れ別居していたマンションで謎の若い女と出会い恋仲になる。『雨月物語』的な現代の怪異譚。ラストの陳腐な展開を除くと、とても良くできたプロットで引き込まれた。ぼくが監督だったら最後は風間杜夫を死なせるが、商業映画では無理でしょうね。