脱力エレキテル

江戸川乱歩「何者」(創元推理文庫所収)読了。
鎌倉の陸軍少将邸で起こった金製品盗難事件。
挙動不審な登場人物が多数絡んでなかなか誰が
犯人か分からない。結末は読んでのお楽しみ(笑)。
「恋愛三角関係」ほか古風な一句一句に痺れる。

「大金塊」(講談社江戸川乱歩推理文庫所収)読了。
「孤島の鬼」を下敷きにグロテスク趣味を差っ引いて、
胸踊る少年物に仕立て上げている。探偵助手小林芳雄と
宮瀬不二夫両少年の純朴な冒険ぶりも清清しく、正しい
少年冒険談といった趣。明智小五郎も一応登場するが、
読者を意識して、明かに前述のニ少年に焦点を置いている。

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GROUND-ZERO / CONSUME RED (CREATIVEMAN, 1997)

ハニカムさんのご好意で聴かせて頂くことができた。多謝!

大友良英のサンプリング・ヴァイラス・プロジェクトの
ひとつであった、「グラウンド・ゼロを消費せよ!」計画第1弾作品。
ライナーに拠れば「韓国東海岸巫俗の長老、金石出による
胡笛演奏のサンプリングをベースとしたGROUND-ZERO初の
アンビエント作品」とのことだが、アンビエントというよりは、
はっきりいって長尺のインプロヴィゼーション、57分ワン
トラックの音響。中盤から特に芳垣安洋のドラムスがフィー
チュアされ、加えて菊地成孔のフリーキーなサックスも激しく
痙攣、混沌としてくる。聴き終えて「静かなアジテーション
というフレーズがふっと浮かんできた。アンビエントは不毛な
自意識から逃れようとするささやかな意識の産物だったが、
この作品には、はっきりとした自意識と、混乱が息づいている。