Sweet Bitter Candy

utubo2003-04-06

久しぶりに近所のレンタル屋へ足を運び、迷い迷った末、3枚借りる。

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Led Zeppelin / Led Zeppelin (1969, Atlantic)

レッド・ツエッペリンのファーストアルバムだ。ぼくが今までにきちんと
聴いたことがあるのは、5枚目の『聖なる館』だけで、それを聴いたのは
ハードなロック未体験の時期だったのでぴんと来なかったのだが、今回は
このグループの面白さが良く分かった。

ロバート・プラントの、ハイノートで叫ぶボーカルスタイルはあまり好み
ではないが、スロウテンポのバラッドで、その実力が良く分かる。おそらく
ハードロック/へヴィメタルの雛型になったボーカルスタイルなのだろうが、
彼ほどうまいシンガーもあまりいないだろう。ただ、個人的にはどうしても
へヴィな感が否めず、3曲目の「YOU SHOOK ME」の最末尾、シャウトとギターの
リフの掛け合いで思わず笑ってしまった。マジメなファンにはきっとおこられるな。

レッド・ツエッペリンのバックボーンというか、彼らの音楽性の幅が広いことも、
その多彩な楽曲によって分かった。基本的にはブルーズ色の強いロックで(とくに
ギターのフレージングにそれが窺える)、ブギーっぽい乗りが面白かった。
大きな音で聴いても音圧に多少物足りなさが残るが(最新版のリマスターではない)、
後半の5〜9曲目(オリジナルのサイドBにあたる)の流れは良質のコンピレーションを
聴いているようでとても素晴らしい。

蛇足ながらお気に入りは2曲目「BABE I'M GONNA LEAVE YOU」。悲しくていいです。

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・Santana / Welcome (1971, Sony)

1曲目を聴いて、「あら」と思った。このフレーズはどっかで聴いたことあるな。
そうドボルザークの「家路」のメロディが引用されているのだ。そういえば
最近聴いたスケッチ・ショウ『トロニカ』でもそれっぽいフレーズがあったね。

1曲目のタイトルは「Going Home」(なぜかアリス・コルトレーンと、ニュー
サンタナバンドの共同名義になっている・ドボルザークの立場はどうなる・笑)。
なんだそのままだ。ポルタメントなオルガンの奇妙な音色が気持ち良い。
最初は強い違和感があったのだが、次第に慣れていった感があった。

3曲目の「ソウサリートのサンバ」もどうやら聴き覚えがある。そうか、
まろんさんに昔頂いた編集テープにこの曲が入っていたのだ、と思いだす。
ああいいなこういう洗練されたな感じは。無条件降伏、という気分だ。

おもしろいのは4曲目「君の瞳」。ソウルな感じのコーラスで幕を空け、
洗練されたクールなボーカル(レオン・トーマス?)がファンクビートに
乗ってスムースに歌い上げていくのだが、演奏が開始され3分ほど経った頃から
奇妙なコーラスが延々つづくのだ。これは聴いていただければ分かるのだが、
のどぼとけを延々たたきながらオヨオヨ言っているようなコーラスで、その
あと、ラテンで歌謡なキーボードのリフが入ってジャムっぽく終わっていく。
うまくまとめようと思えば、実にテンダーなソウルチューンになっただろうが
サンタナとバンドメンバー達の遊び心が良く感じられてとても楽しい。

続いて5曲目「君こそ光」。ボーカルにフローラ・プリンがフィーチュアされて、
サンタナの長いギターソロもイイ感じにグルーヴ。言葉はいらない心地良さだ。
ボッサな感じのリズム隊も、実に心地よく端整にリズムを刻んでいる。

時代が時代で、ロックミュージシャンたるサンタナもみごと東洋思想にかぶれ、
ジョン・マクラフリンを通じて、コルトレーンの存在を知り、このアルバムでは
とうとう未亡人アリス・コルトレーンと共演している、とライナーにあるが
そんな背景などどうでも良くなるくらい良い塩梅のラテン風味なロックだ。
アルバムの華である「FLAME SKY」のフュージョンともプログレともつかぬ長尺も
実にイイ塩梅で、美しい「WELCOME」(コルトレーンのカバー)にするりと繋がり
幕を閉じる。'71年当時のサウンドとしてはかなり洗練された部類に入るのではないか。

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Jeff Beck / There and Back (1980, Epic)

うわー。時代の音です。シンべ来たー!(クラビネットの音らしい)と叫んでいると、
ギターを抱えた宇宙人襲来という感じ。聴き始めてすぐに「ああ、ぼくは『Blow By
Blow』のほうが好みだな」と思ってしまった。これは『Blow By Blow』『Wired』に続く、
ジェフ3枚目のソロアルバムで、全体的にかなりロック的な色が強い。『Blow By Blow』は、
非常に完成度の高いジャズとロックの折衷アルバムで、ぼくは大好きなのだ。

ジェフはそもそもテクニシャンとはいえロック畑の人間だからこうなるのは自明の理だった
のかもしれない。しかし悪いはずがない。とくにファンキーなベースのフレーズには痺れる
ことしばしば。この時期特有のシンセサイザー使いたい病がそこここに見え隠れして時々
白痴的なシンセサウンドが響き渡るが、ギターの迫力がそれをすべて吹き飛ばしてくれる。
ロックサイドのジェフ・ベックが好きな人(おそらく多くのジェフ・ベックファンはそう
なのだと思う)には、このある意味プログレでハードなアルバムを嫌いな人は少ない様に
思う。ただ、弾きまくってる感は否定できない。気分次第でもちろん印象は変わるだろう。