ドラゴンクエスト5 天空の花嫁

ドラゴンクエストV 天空の花嫁

 『ドラクエ5』は1-5までのシリーズのなかでは、最も性的な要素が多い。また作品内で「勇者」がリプロダクトされる作品とも言えるし、主人公と思っていたキャラクターがじつは変っていく。これを『ドラクエ4』では、章立てのストーリー構成の上、個別キャラ群でやっていたのでやや散漫だったが、5はキャラの成長/変化を「家族」に落としこんだことで、製作陣およびファン、そして作品そのものの「成長/成熟」を表現なし得たのではないだろうか。言うまでもなく、偉大な父とその子勇者という設定はすでに『ドラクエ3』で現れているので、『5』は『4』とともに『3』も参照しているわけだ。
 個別のキャラクターが持つプロパティとしてのパラメータにおけるレベル(これはモンスターとの銭湯に勝利し経験値を稼ぐことによって上昇する)を上げるだけでは誰もが満足しなくなり、「レベル」が複線化したのである。個人としてのレベル(職業レベルの上昇=強くなる=戦闘能力の上昇)と社会的なレベルである(結婚と出産、子供の成長)。これを主なユーザとしての青少年にプレイさせることで、ある種のイニシエーションを仮想的に果たしていたのではないだろうか、などと言ってみるとそれらしい。また戦えば戦うほど強くなるという純朴な世界観がリアルタイムでプレイした少年たちが、サラリーマンとなったいま、ある種の清涼剤またトランキライザーとして機能しているであろうことは想像に難くない。