MARRON -3

夕刻よりまろん邸にお邪魔する。最寄の駅からイエス『危機』を聴きながら
歩いていたら、体が熱くなってきてしまった。それにしてもドラムが変わった
叩き方をするなあ、バロックなキーボード最高、などと思いつつ音楽に昂奮
してしまったからに違いない。気温と湿度の高さもあったのだろうけど。


しかしイエスって凄いバンドだったんだなー。ぼくがイエスの名前を知ったのは、
たぶんYMO絡みの記事だったと思う。プロデューサーのトレヴァー・ホーンが大胆な
サンプリングを導入したというリードで『こわれもの』が紹介されていたのを雑誌で
見た記憶がある。高校生のときだった。で、今、トレヴァー・ホーンが、オーケストラ・
ヒットをジャンジャン鳴らしていたのって果たして『こわれもの』だったかちょっと
不安になってしまったのだけど、まあいいや。『危機』でもっとファンキーな黒いベースが
のたうちまわってたら、イエスはどうなっていただろう、などと妄想しつつシベリアン・
カートゥルを雨にうたえばまろん邸。まろん邸のそばのデニーズは、いつも静かだ。
曇り空の下、葉桜が頭を垂れて雨に濡れている。


スパゲティをご馳走になりながら、いろいろと脈絡無く話したのだが、まろんさんの
レコードで柔らかいジャズを沢山聴かせて頂いた。オスカー・ピーターソンのハイソで
悩みの無い感じのジャズや、とても洗練されてラウンジーなJ.J.ジョンソン…。ロック
レコードはデイブ・メイソン、アヴェレージ・ホワイト・バンド、RCサクセション、ZNR
なんかを聴かせていただいた。今日は極めてプログレ指数低めである。他にはアメリカの
謎のパーティーバンド(しろうとっぽい)と、ロシアのあやしいニューウェーブバンド。
両方ともどこか拙い感じがあるのだが、こういうちょっとヘタクソでも楽しい音楽を
聴いていると、楽器を演奏したいなあ、とつくづく思ってしまう。このレコードがどうだ
こうだと喋っているのももちろん楽しいものだが、実際に音楽を奏でる楽しみにはなかなか
かなわないだろう。むろん聴くのも演奏するのもそれぞれの良さがあるのだが。楽器は
練習するのが面倒だし(笑)、自分が思うようになかなかいかないことが多多あるのだけど、
知り合いでパーティーバンドとか組めたら実に楽しそうだ、とほんの一瞬妄想タイム。


うたかさん凄い


「うたかさんはねえ、ぼくホントに好きなんだけどなあ…」
「わたしもね、今いちばんネットで読むのが楽しみでね」
「いいですよねえ」
「でも、女子にはダメなんでしょ?」
「ダメでしょうねえ。やっぱりね。」
「あの、よっすぃーとの話なんか凄く良いんだけどなあ」
「鬱屈してる男子はもうグサグサきますよ(苦笑)」
「せつなくてとてもいいよ」
「あのせつなさはね、絶対性欲だと思うんですよ、性欲が抑圧されて…」
「そうかなあ?」
「そうですよー」
「そんな簡単にせつなさの理由をそこに求めてしまっていいのかなあ」
「だからね、女子には最も分かりにくいせつなさだと思うの」
「うーん」
「いや、すごくブンガクしてますよね」
「そうね、未踏の地だと思う。前人未踏の…モーヲタ文学、モー文学か(笑)」
「けっきょくね、モー娘。ってものを通してうたかさんって人が見えてくる」
「まあ、そうだよね」
「あの衒いの無さがすばらしいと思うんですよ。あれだけ芸に昇華できるのが」
「うん」
(その後エロはいかにして文学になりうるかという話になったのだが割愛)


ソニンどうよ


まろんさんはソニンどう思いますか?」
「いや、彼女は賢いと思うよ」
「ねえ、なんかインタビューとか読んでても知性を感じますよね」
「実際、この間、クイズ番組に出てたんだけど、とても賢い回答をしてたよ」
「そうですか。頭良いのか…」
「その、やっぱりネットって偏ってますかね、一般社会と(笑)」
「偏ってるだろうねー」
「ほら、なんか多いでしょ、ソニンファンとか、モー娘。が好きだとか」
「わたしは正直モー娘。には萌えられないなあ(笑)」
「(笑)」
NHKロシア語会話の女の子がいいんだけどねえ…黒髪で」
「そうですか(笑)」


♪アイドルポップスって


「そのね、モーニング娘。とかちょっと聴いてみて思ったのは」
「うん(笑)」
「アイドルポップスって楽曲主義じゃないんですよね」
「そうだね、あくまでもアイドルありきのものだよね」
「歌はアイドルのキャラクターを補強する存在っていうか」
「そうだろうね」
「だから、非常に歌う人と歌の上下カンケイというのかな、そういうものがある」
「楽曲単体で評価しにくいんだよね」
「やはりポップスの中でも特殊なものだな、という感じがしました」
「おそらく、ファンの評価基準ってのは別のところにあるんじゃないかな」
「萌えポインツとか(笑)ヘタクソだけど、かわいいとか」
「歌がうまいから聴くとか、そういうんじゃないんだよね、たぶん(笑)」
「あと思ったのは、歌詞のメッセージ性が強い、とくにモー娘。は」
「(笑)」
「ファンに向けてのものなのかな、と思うんですけど」
「そうなんじゃないかな、きっと」


このようにとりとめなくとるにたらない話をしていつものように11時過ぎにお開き。
まろん邸で過ごしている間に雨はほとんどやんでいた。帰宅して入浴して就寝。


註:トレバー・ホーンのプロデュースで有名なのは、『90125』というアルバムだそう。
今、記事の内容を思い出したのですが、この頃のイエスってバンドとしてダメダメだったとか
書いてあったような気がするなあ。『こわれもの(fragile)』はどこかで聴いた覚えが…。
あるようなないような。なにはともあれご指摘下さったまろんさん、ありがとうございます。