北野勇作「どうぶつ図鑑 その1 かめ」(早川書房)

読了。


なんだか妙に亀づいている。単に二日続けて「亀」な小説を
読んでいるだけなんだが。短篇集だから、この作品集はわりと読みやすい。


「カメ天国の話」が、わりとくすくす笑える感じで好きだ。不条理SFという
のかな。個人的に連想するのは、藤子・F・不二雄の「夢カメラ」とかあの
一連のシリーズの雰囲気だったりするのだが。マンガ以外では思いつかない。


「カメリ、リボンをもらう」は奇妙なレプリカメ世界の話で、これには椎名誠
書いていた赤目(人造人間)の出てくるSFを思い出した。「武装島田倉庫」とか。
和やかなフリークスたちがいい。人間もカメリみたいに暮らせれば良いのかも。


「かめさん」は「かめくん」のプロトタイプみたいだ。ただ、読んでいる間に
くらくらしてくる。ドラッギーなのだ。作品が唐突なイメージによってごろごろ
転がっていきダウナーでサイケデリックなイメージが頻出する。これはSFなの?


「生き物カレンダー」を読みつつ、つくづくこの人は夢か現実か、みたいな
モチーフが好きだなあ、と思った。ちかちかまたたく街灯みたいなペシミズム。
読み終えた後は扉の陰で息を殺してから、6時発の貨物列車に忍び込みたくなる。