小池寿子『死者たちの回廊』(平凡社ライブラリー)読了。



中世ヨーロッパで、ペストの流行と共に流行・伝播したトランジー(腐敗屍骸像)の起源を探っているのだが、これが面白い。
キリスト教における煉獄の発生と、トランジーが関わっているのではないかなど、筆者の提案が興味深い。
トランジー(腐敗屍骸像)は、ペスト流行時に欧州各地に勢力を広げた
異端キリスト教勢力、鞭打ち苦行者(文字通り己が体を傷つけながら、布教を行う)たちの
起こした教会に残された壁画が主で、版画の誕生と共に印刷物としても欧州各地に広まったそうだ。


生と死がほんとうに文字通り隣り合っていた、中世のヨーロッパ人の生に対する執着を、
意外な側面から覗かせてくれた。とくにガイコツ好きの方、あと、水木しげる好きの方はたぶんイケルと思う。