WILD SKETCH SHOW



パーソネル


高橋幸宏(vocals,drums and percussion)
細野晴臣(vocals,bass,percussion and acoustic guitar)


小山田圭吾(guitars, electronics)
徳武弘文 (bass, guitars)
田中純子 (keyboards ; mainly accordion)
堀江博久 (keyboards)
権藤知彦 (manipulation,euphonium and flugel horn)


暗くなった空から降り続ける雪と足元から忍び寄る冷気にひたすら
震えながら数十分入場を待つ。自分の前に、千人近くの人が
入っていくのを見ているのはなんともじれったい気分。とても寒いし。
会場のAXに入るとイイ具合にBGMなエレクトロニカが延々と
流れていて、早くも足が痺れてきて非常にイイ感じ(笑)。


7時を5分ほど過ぎて開演。冒頭で、高橋細野ご両人の挨拶があり、
観客の笑いを誘った後、スケッチ・ショウ抜きでYMOの曲から3曲
演奏された。ちょっとこの時既にイヤな予感がしていた(苦笑)。


スケッチ・ショウご両人が再度登場し、アルバム収録曲を披露する。
前に居た人の身長が高くて(笑)、正面が観れなかったということも
あるのだが、いっとう注目したのは上手に居る小山田圭吾のギター。
彼は終始嬉しそうに微笑みながら、時に歌いながら、ギターを奏でる。
白眉は「Do You Want Marry Me」の間奏に出てくる奇妙で気持ちの良い
メロディーをギターで再現したこと。この小山田のプレイに関わらず、
スケッチ・ショウ・バンドは、実に抑える所は抑えて演奏するオトナな
バンドだった。とくにギターの使い方がクールだと言えるように思う。
普通のロックバンドだったら弾きまくるところを決して弾きまくらない。
ある種サポートメンバーは楽しみながらも、確実に職人に徹していた。


徳武弘文の滋味で職人なギター、小山田のクールかつロックなギター、
田中純子の饒舌ながらも決して前に出てこないアコーディオン、堀江の
弾きまくらない抑え目のキーボード、そしてアコースティックとデジタルの、
名実ともに‘つなぎ目’のマニピュレーター、権藤知彦の吹くあたたかな
音色のユーフォニウムとフリューゲルホルン。彼の音はこのスケッチ・
ショウ・バンドの音楽に目立つことなく、確かな熱を与えていた。このことは
決して忘れるべきではないだろう。さびしさを湛えつつもどこかユーモラスで
生のダイナミズムに溢れたバンド・ステージは、いったん幕を閉じる。


青山のスパイラルホールで感じたDJセットのキツさを反芻しつつ、後半は
スケッチ・ショウのみのDJっぽいステージ(何をやっているのか良く
わからない・イコライザーとかをかけているのだろうか)。これが……
かなりイイ具合に痺れてきた両足にキツかった。というかかなり大勢の
客のほとんどがまったく動かずに(動けずに、か)ダンサブルでクールな
テクノをじっと聴いているというのはなかなかシュールな光景で、延々と
流れつづけるモニタの映像が目に苦しく(笑)、目を閉じたら、恐ろしい
ことに、数分間、立ちながら眠ってしまった(苦笑)。次に目を空けると、
皮膚はおろか、鼻腔の内までが太く重いビートにぶるぶると震え、ああ、
どこかで聴いたことがあるメロディ。「こんなにまずいトーストは今までに
食ったことがないぜ」。嗚呼、これが噂の「Pure Jam」リミックスか(笑)。
曲の途中で再生YMOみたいなことをしつつも(苦笑)、いきなり4つ打ち
なり、ふたりがなぜか「過激な淑女」の振り付けで踊り始める(大苦笑)。
う〜ん、もうなんでもありなのだろうか。往年のファンらしき客たちは
大歓声。まあでも、もうホント遊びたいんだろうね。スケッチ・ショウは
ひょっとするとそれなりに年をとった‘おじいちゃん’こと細野晴臣
‘おじさん’な高橋幸宏がわりと本気で遊ぼうとし始めた最初のステップ
として記憶されるのかもしれない。


アンコールでは、「CUE」「中国女」(小山田の簡潔なロックギターが
炸裂・たいへん良かった)「はらいそ」が演奏された。極めてシリアスな
YMOファンには、未だにオリジナルのヴァージョンしか認めない、なんて
言う人も、もしかしたらいるのかもしれないが、テクノポップにはすごく軽薄な
側面もあったわけで、こうやってある意味オリジナルの演奏者たちが、曲に
‘軽さ’を与えて(セルフ)カバーすることは、その楽曲、音楽自体をより
自由にすることかもしれない、などと思いつつも、ちょっとサーヴィス過剰
なんじゃないかな〜(苦笑)という気分も否めなかった。アンコールで演奏
された曲にはどれひとつとして嫌いな曲なんてないし、もちろんYMO
細野晴臣も心の底から好きなのだけど、ラストをスケッチ・ショウの新曲で飾ったら、
きっとかっこよかったよ、と思ったりして。いや、実際前半のバンド・セットで
演奏されたスケッチ・ショウの新曲(3曲ほどあったように記憶しています)が
エレクトロニック・ファンクかつ歌心があって、非常に良かったので。


今回はまあ懐メロ大会の空気が濃厚だったのだけど、次のアルバムと、
来るべきライブに期待します。決して嫌いじゃないけど、次はYMOの曲は、
なしでいいです(笑)。細野さん、ステージで徳武さんとバンドやろうって
いってたけど、そのバンドを従えていっそソロアルバム作っちゃったら、
どうかな?アイデアがなけりゃセルフトリビュートとか言っちゃって。
なんだかトリビュートって最近流行ってる感じもあるしい、不況にも
かかわらず売れちゃうかもよお(我ながら非常に嫌な感じだな)。


今回の流れも、風待ミーティング〜ティン・パン〜はっぴいえんど
トリビュートという流れの上にある(前後間違っていたらごめんなさい)
ある種のセルフリバイバルな側面も(業界的再評価みたいな、ね。決して
否定しませんが・YMOの曲をやったのは来月ソニーから再発が待ってるから、
って憶測はさすがに穿ちすぎているだろうけど)あるんだろうけど、
良い曲が人口に膾炙していくのは純粋に歓迎すべきことだからここらで
いっちょ細野晴臣トリビュートアルバムなんて出来てしまってもよさそうな
もの。細野さんの曲の良さをもっと多くの人に知って欲しいなという気持ちは
確かにあります。そういう意味でも、なんか新しいプロジェクトと懐古的な
イベントは同時進行でも切り離してやってほしいな、という気持ちがあるんです。
もう当人達には、そんなのどうでもいいことなのかもしれないけどね(笑)。


余計なことを思いついたままに書きすぎた気がします。でも、まあいいや。