村井康司「ジャズの明日へ」(河出書房新社)読了



著者の村井さんは、来春小学館から刊行予定の菊地成孔
単行本の編集を担当されている方でもあり、非常に興味深く
読みました。60年代から80年代までのジャズを俯瞰しつつも
非常に砕けた文体で読みやすい。なによりも「俺は、俺は、
オーネット・コールマンが〜、マイルズ・デイヴィスが好き、
好き、大好きなんだ〜」という真摯な気持ちが熱く伝わって
くるところに好感が持てました。また、氏は決してジャズヲタ
というわけではなくて、様様な音楽を渉猟されているようで
広く「音楽」を見やる視点を併せ持っているのが感じられる
のも、とてもイイです、間口が広いというのかな。今後は
こういうジャズ紹介本が増えると良いなあ、と思うことしきり。
蛇足かもしれませんけど、ぼくはマイルズ・デイヴィスの音楽を
聴いていると、彼は決してジャズをやろうとしていたんじゃなくて、
ジャズってのは、もちろん彼にとっての揺るぎ無い拠りどころ
なんだけど、それを前提として、もっと音楽全体を俯瞰していた
ように感じることがままあって、この「ジャズの明日へ」を
読みながら、似たような雰囲気というか姿勢を感じました。


なんだかんだいってもまだまだジャズって敷居が高いような
雰囲気があるみたいで、余計な知識を身につける前に、偶然
エリック・ドルフィーなんか聴いてしまって、ジャズの虜に
なった小生のようなものも居るわけですが。若い音楽ファンに
おすすめします。これからジャズ聴いてみたいな〜という方
にも良いのでは。たぶん読みながら、ついレコード屋に寄って
しまう方も出てくることでしょう。そういうパワーがこの本には
あります。個人的には、マイルズ・デイヴィスのエレクトリック
期の概容とジョン・ゾーンについても知ることができて、とても
良かったです。最近は、初期のジャズばかり聴いていたので、
この本片手に、来年はモダン・ジャズに接近したいと思います。
なんちって。いや、これイイ本ですよ。まじでオススメでっす。