菊地成孔(DCPRG)インタビュー(text:山内志な子)@M2 



名古屋在住Uさんのご好意で、名古屋で配られているフリーペーパー『M2(エムツー)』第五号(菊地成孔インタビュー掲載)を送って頂きました。その内容を今日と明日の二回に分けて、ご紹介します。


●新しいライヴ盤は2枚組で、1枚には「Catch 22」(ライヴの冒頭で必ず演奏される全員違うリズムでグルーヴを出す曲)のバージョン違いだけを収録してますね。


今のCDは80分入るからギリギリ79分まで入れた。うちら99年から活動してるんだけど、初期は音源もまさかライヴ盤出すとは思ってないから残してないの、全く。だからわりと収録時期も幅広くなく。聴いてみたら良かったですね(笑)。というかこんな風になってたんだって感じ。譜面は毎回同じだけどジャズと一緒で演奏は毎回違うからね。実は今回までライヴの音源ちゃんと聴いたことなかったのね。ま、僕の場合、デートに限ったことじゃないけど作った音源聴かないの。今回は初めて聴いたね、テイク選ばなきゃいけないし、編集もしなきゃいけなかったから。


DCPRGは戦場のような音楽をやりたいってことで始めたんですよね?


立ち上げた99年はね、オンタイムで言うと全然戦争なんか来そうもない雰囲気ね。新世紀待望論のオプティミスティックな雰囲気にもなってて。コソボNATO空爆とかもあったけど、あの頃誰も反戦デモとかやってないし。でも、その段階でもう絶対戦争来る来るって、備えておかなきゃって気分だったわけ。それで9.11があって戦争が起こって。すごい簡単に言うと不安神経症の症状なんでしょうけどね。


●で、実際起こってしまった、と。


全然気分違いますよ。不安神経症としての戦争不安だから現実となった時点では解消されるわけです。でもあれは世界的に始まりというか、全く戦後がないっていうか。21世紀になってどこが戦前でどこが戦後かっていう20世紀的なぱっきりした枠がもうなくなったんだよね。イラク戦争も戦後処理とか言ってるけど、そんな気運はバグダッドにもないと思うし、またテロは起きる。だから全員びくびくしてるのね。いつ来るかって。その疑心暗鬼というか、インターネット的な戦争のあり方って、いつテロが起こるか、いつネットに悪口書かれるかっていうびくびくしたメンタリティを世界中に蔓延させちゃった。その気分をさ、初期デートは敏感に持ってて、何の根拠もなく。それを音楽で解毒するようなやり方でフロアが熱狂しちゃってる。みんな踊ってるんだけど、この子達きっと引きこもりなんだろうな、とか、対人ストレスとかさ。ちょっとでも傷つけられちゃったらもう現場に行かなくなっちゃうような子が踊り狂ってる。フラストレーションで踊ってるんだよね、対人恐怖症とか、ぶっちゃけ精神状態的に異常がある人ね。そういういろんな形の神経症的なものが治癒されていく過程、癒しって言葉もあるけど、デートの場合はもう治療だよね、簡単に言うと。治療のバリエーション。電車乗れないとか家を出られないとかそれが国民的に増えてきた。今も治療中だけど、自分は音楽とか精神分析で治ったから、そこが音楽をやるアイデンティティをゲットしたんだよね。デートのファンってジャズ好きもテクノ好きもファンク好きもいて、レイヴやトライバル好きもいて、くるりファンもいる。それを一括してまとめるキーワードがあるとしたら、結局治療でしかないわけ(笑)。


●うんうん、家でデートのCD聴いてても踊りたくなっちゃう。時々やばいな、って思うんです。


ああ、そうなんだよね(笑)。僕も自分で思うんだけど、こんなに踊りたくなる音楽ってちょっと異常じゃないかなって。病的だと思う、ははは(笑)!恐ろしいなと感じるよ、自分でやってて。ちょっと中毒性が高いというかドラッギー。危険な感じがするよ(笑)。


●戦争不安が消去、次の方向は?


「構造と力」、ファンクって構造の音楽でしょ?それが力を生んでいく、という根本。それとヒーラーが集団で踊ってヒステリーや精神分裂を治すダンス治療があるでしょ、昔から。トランス状態みたいなのは日本にもあった。そういう治療としてのダンスの側面ね。構造としてのファンクが自我の構造とくっついて治療に向かう、と。回りくどいこと言ってるけど、「ゲット・ファンク!」ってことなんだ。


●名古屋初ライヴ、楽しみにしてます!


2時間半やるよ、秋に出る新しいアルバムからもやるし。メンバー相当モチベーション上がってるからね!


ちなみに、あさって7月10日(木) DCPRGライブ 午後7時半スタート@名古屋クラブクアトロ (前売り3500円)ということなので、中京地域在住のDCPRGファンはぜひ楽しんできてください。


(つづく)