北野勇作『どうぶつ図鑑 その3 かえる』読了



全6巻のうちの3巻目。8篇収録。北野は実に隠喩の巧みな作家だと思う。
ストーリーそのものもかなり隠喩的なのだが、それがいやみにならずに読めてしまうところが不思議だ。
といっても読後感はすこぶる不安に満ちてるんだから、たまらない。うなりながら読んだ。


どうぶつ図鑑シリーズの1冊目にも収録されていた、カメリの連作がいちばん好きだ。
ヒトデナシのアイドル、カメリをはじめ、地球の内側に住むユーモラスないきものたちの、素朴な生活が描かれているところになんとなく安心する。
収録作品の多くは生への不安や現実の不確かさがテーマだから、後半に現れるカメリたちの地に足の着いた生活ぶりが実に微笑ましく思えること請け合いだ。