シンコペーションの欲望
11日。NHK放送センター505スタジオに、NHK-FM「ライブビート」の公開録音を観に行く。
最初に出てきたのは、山本精一のパンクバンド、MOST。残念だけど、やっぱりオンビートな
ロックは苦手だなあ、と思いながら聴いてしまった。演奏力がすばらしいから、どう聴いても
インテリ・パンクにしか聴こえないのだ。ただ、山本精一のフローティング感覚溢れる
ギタープレイにはずっと釘付けになった。彼も才あるミュージシャンに漏れず、ずいぶん
シャイなひとのようだ。じっと見ていると、彼のシャイネスと興奮が伝わってきた。
それにしても、どんな音楽でも演奏できそうなリズム隊のいるパンク・バンドはおもしろい。
8分の6っぽい曲とか、セカンドラインっぽいノリの曲が併せて2曲あって、それはダンサブルで楽しめた。
ロックな感覚というのは自分の中にあるけれども、それを常時ダイレクトに8ビートのサウンドに求められるかというと
ぜんぜん別の話なんである。まあ、ロック音楽じたいにはあんまり興味がないということなんだろう。
次に出てきたのが、とん平&ビショップという、人を食った名前のグループで、DMBQというサイケロックバンドの
増子真二というひとが地味変ギターを弾いて、うしろにはカラオケが流れており、松居徹というボーカリストが
「インターネットは身体に悪い」「お前らの帰るところはないんだよ」「東京砂漠」「革マル派」などと叫び続け、客が
大喜びでもだえ狂う地獄の味噌倉。なんとなくクリティックでシアトリカルなパフォーマンス。むかしの前衛な演劇とか、
こんな感じだったのかな、と思いながら見る。ケミカルウォッシュとスト2Tシャツとバンダナにだまされるひとも
いるのだろうけど、かなりインテリ臭漂ってました。こういうキチガイっぽいステージはホントのキチガイにはゼッタイできないし。
終演後、しばらくアンコールが続いたのでけいさん、かたるさんと一緒に遠巻きに眺めていたのだけれど、
機材を片付けに来たふたりは冷静な感じで、クスリも使わず(使ってたのかもしれないけど)
あれだけ脳内麻薬を出せるのはすごいなあ、と感心しました。
弐バンドあって、どっちがパンクかって訊かれれば、「とん平&ビショップ」って答えます。
サウンドはこっちのほうが、断然脱力黒人なんだけれども、精神的にパンク(というかロックか)ではないかと。
ちょっと岸野雄一の「ヒゲの未亡人」(ゲイリー芦屋とのプロジェクト)を連想したりしました。
まあ、音楽のカテゴリなんてどうでも良いんですが。音楽じたいがおもしろければ。