二本松男二人旅 その4



「何が二本松なのか」と首を傾げておられる方もいるだろうから、ここで(いまさら)解説しておくと、
今回愚父と小生が滞在している岳(だけ)温泉は、福島県二本松市に位置するのである。であるからして(以下略)。




午前八時から朝食。この宿の食事は、全般的に塩分が強めだが、猪苗代湖の辺りでとれたという会津の米が一貫してうまかった。


朝起きたときにはすでに降り始めていた雪が、刻一刻とその勢いを増してきた。ここに滞在した四日間の中で、今朝が最も寒い朝になった。
風が出れば今夜はひどく寒い夜になるだろう。しかし今日の夜にはもう家へ帰って寝ているのだ。
のんびりして特に何もしない旅だったが、父が喜んでいたようでよかった。
小生も、もっと父が年老いて、あるいは死の床に着く時分には(まだ少し早い)きっとこの何をするともな過ごしたこの旅行を懐か<しく思い出すのだろう。


旅行については、どこへ行って何をするのかが問題ではなくて、誰と(むろん一人旅も含める)、どの位(期間)、どんな気分で行くのか、
この三点が、最も重要な要素ではないだろうか、と旅の終わりを目前にしてぼんやりと思い付いた。
窓の外に降る雪は一層その激しさを増していた。