春日武彦 / 私たちはなぜ狂わずにいるのか(新潮OH!文庫)



「ロマンティックな狂気というものはないのだよ」 という通奏低音が一冊を通じて流れているのはよくわかった。 一時的に「狂」った状態と、「狂気」がまったく別のものである、という立ち居地も実に明確に記してあって、よく覚えている。しかし「狂気は想像力の解放区などではなく、有限な類型に収まってしまう」という言説は大変刺激的で魅力的。かなり誠実な作者の言葉は好ましいのだけれど、なかなかどうして内容はハードです。