三砂ちづる / オニババ化する女たち (光文社新書)



 問題の多々ある随筆だが「体に目を向けよう」という身体論の啓蒙書としては良い本でないかと思う。著者の専門がお産にかかわることだから、仕方が無いと思うけれど、男性読者の「からだ」についてはあまり触れられていない。後半の「身体感覚の低い男は、身体感覚の高い女に導いてもらえば良い」という案内は、いささか取って付けたようで残念。

 セックスばかりが人間の心身への意識を高めるものではないと思うのだが、筆者はとにかく女は若いうちに性交して、子供を産めという。そして今10代で妊娠する女性が無事出産し、子育てできるような環境づくりを支援しているようだ。10代で妊娠する女性...。そういうものに対する偏見を無くそうという意識もおそらくあるのだろうが、なかなか難しいだろう。

 筆力が無いわけでは無いのだから、もっと整理された論文調のものを読みたい。あまりにも随筆している。ブラジルの産科事情等、日本とブラジルの意外な関係が分かるのは面白い。