ユリイカ増刊『オタク対サブカル』を読んで



 ユリイカ増刊『オタク対サブカル』を読んだ。「もしやオタク、サブカル比較文化論みたいなことをやっているのかな」とすこし期待して読んだら、「オタク」と「サブカル」の概念規定そのものがあいまいで、残念だった。わたしは「オタク」も「サブカル」も今やひとりの中に同居しうる要素なんじゃないかと思っていたので、そのあたりをうまく切り分けて、これらの概念化および論証を強くやったりする特集かと思ったが、収録された制作者本人たちの対談を読んでいると、語っている当人たちも、オタクとサブカルの概念規定/共通認識を作れていなくて、会話が手探りしている。こういうプロセスをそのまま出しちゃうってところが、ブログぽいというか、インターネットのひとたちっぽいなあ、と思った。


 扇情的にオタクとサブカルを対立概念としておくのはいいけれど、これがもしも『オタク対サブカル』「論」を意図した企画なのであれば、あまりに未消化だと言える(前書きに特集のコンセプトについての記述があったかもしれないが内容は忘れた)。但し、随筆集としてはおもしろい文章も多い。


 特筆すべき点としては、岸野雄一へのロング・インタビューがあって、通史とか歴史観ってのは、最近は軽んじられてるんだろうけど、それじゃつまらないでしょ、というような話。これ読むだけでも、買ってよかったな、という気持ちにはなった。吉田アミへのインタビューは現在30代地方出身者ブログ持ちの共感を呼ぶところ大ではないだろうか。


 通読したさいに、オタク/サブカル/一般人っていう分類が、あまりに雑駁じゃないかと思ったけれども、ここまで書いてきて、その辺りの論証をしっかりやってしまったら、それは学術誌になってしまって、軽い読み物集にはならないんだろうな、とも感じた次第。