菊地成孔とペペ・トルメント・アズカルール@モーションブルー横浜



 観るのは三回目。最初、恵比寿で観た時は、かなり死の欲動に訴えるものがあった。次に代官山で観た。この時はだいぶ生のエナジーを放っていた。今回はほとんどエロースだった。しかし、これだけ毎回「音楽」が違うというのはとても興味深い。菊地さんは「へっへーん、こんなの余裕だぜ」という表情で、テナーサックスをプキプキピキピキギャピポとやっていて、痛快だった。会場はさすがにドレッシーな客が多く、田舎青年の洋装で訪ねた小生はいささか恥ずかしかった。席はよい場所だったが、ほぼ正面を見るには常に首を右に傾げる必要があったので、ちと疲れた。PAは良かったと思う。前回の代官山ではピアノの音が大きく拾われていたが、今回は、サックスを中心にコンピングの音になっていたから。あれはあれでよかったんだけれども、音楽がどうして、いかに良いか、なんていうのはその時々の気分や体調に実に左右される。あの時は、攻撃的なピアノを求めていたのだとしかいいようがない。南さんが菊地さんに嫉妬しているようなプレイだった覚えがある。


 しかし、やはりきょう改めて、南さんのピアノは素敵だな、と思い、わたしは彼のソロライブに行こうと決めた。バンドネオンはあんまり良く聞こえなかったが、全体のアンサンブルにずいぶん馴染んでいるように思った。カヒミカリイは2曲歌うだけだが、彼女のステージングは印象的だ。自分のパートが終わると、ソロイストのほうへじっと視線をやって、音楽の響く空間をまなざしで愛している。それが、とても好かった。12月のキクペペにも、もう、行くしかないだろう。わたしはすっかりこのバンドの虜になってしまった。