ティム・バートン監督 / チャーリーとチョコレート工場



 新宿の松竹会館で。彼の作品はご存じリメイク版で、70年代に制作された一番最初の映画を、わたしは地元の公民館のようなところで観た記憶がある。一昨年あたり、市立図書館にビデオがあるのを知り、計二回観ている。ロアルド・ダールの原作は、日本語版を数回読んだ。といっても小学生の時分である。八つか九つあたりではなかったか。記憶は定かでない。


 今回はチョコレート工場の主、ウォンカをジョニー・デップが演じたが、これが素晴らしかった。queerかつinnocentなキャラクタを好演していた。わたしの関心は、実は描写方法によってはポリティカル・インコレクトだと指弾されかねない、ウンパルンパという小人族を、バートン監督がどう表現するかだったが、CGを駆使し、ポップな狂言回しに仕立てあげていたところには感心した。うまくやったな!という感じだ。わたしが小学生の時分に観たそれは、小人俳優を動員しフリークス趣味を全面に押し出したものだった。子供心には悪趣味、というよりも気持ち悪い者が跳んだり、歌ったり、はねたりしていて怖いという感じを覚えた。きょうび、この種のえげつなさを直接に作品として表現することは、差別問題も絡んで難しい。彼の判断、あるいは制作側の判断は、ヒットを狙う上で正しかったと言っていいだろう。しかし、バートンの悪趣味は、金のチケットを入手して、工場に招待された子供たちを歓迎するシーンで見事に炸裂していた(見てのお楽しみ)。その後の、工場見学のシーンでも、感じられたことだが、今回のウォンカのキャラクタには、明らかに、悲しい道化としてのマイケル・ジャクソンが投影されている。見方によっては、彼を揶揄しているように取れないこともないが、それは深読みのし過ぎというものだろう。チョコレート工場とマイケルのネバーランド、という話もあるにはあるのだろうが。


 キャスティングや美術も素晴らしい。ちょっと長く感じさせるのが珠に傷で、ある種の残酷さや不真面目さが、そこかしこに刻印されているので、好き嫌いの別れる作品であることは間違いないが。