ドイツ写真の現在/アウグスト・ザンダー展@東京国立近代美術館



 溶鉱炉や炭鉱の採掘塔、ガスタンクなどの写真が多かった。20世紀っぽい美意識だな、と思いながら、一方でドイツの街並みに見える建築の美しさにため息をつく。
 20世紀初頭に立ち並んでいる建築物は19世紀〜それ以前のものだろう。シンメトリーな構造の建物が多い。そして窓が多い。
 ドイツではないが、昔、英国には「窓税」という税金があった。ガラスが高価だった時代の話で、窓を沢山取り付けるのは金を持っている証だった。そこで庶民は窓を潰して少しでも税金を安くしようとしたが、見栄っ張りの成金が、壁に穴を開けて家中窓だらけにしてしまった、というエピソードを思い出すくらい、窓が多かった。そしてレンガ造りである。


 常設展(「近代日本の美術」)もおそろしく充実。日本画にしろ洋画にしろ、幅広の作品が多く「ああ、国立って感じだなあ」と思う。コッカコッカと作品の数と質に圧倒される感があった。いろいろと目に付くものはあったが、カンディンスキーの「The Ensamble」(1940年)という作品を見ることができてとてもよかった。 常設展の一角に設けられていた「アウグスト・ザンダー展」で展示されていたワイマール時代の人物写真はきわめて印象的。「顔は人なり」という感じで、引き込まれた。