福満しげゆき / 僕の小規模な失敗 (青林工芸舎)



 過剰な自意識だけがとりえで鬱屈している青年のぼんやりとした生き様を描く自伝的マンガ。
 鬱々としているわりには、柔道やったり、マンガを描いたり、ボクシングをやったり、案外活動的で、酒を飲んで記憶を無くしたりしている主人公が、恋人を得て結婚までするが、生に対する不安がぬぐえないというストーリーは、なかなか生々しい。また片恋時の内面描写も繊細で、思考が何度も堂々巡りしたり、自己との無為な対話をするあたり、共感を以って読み応えがある。
 言語化できていないひ弱な上昇志向が、主人公を通して垣間見えるところもなかなか興味深い。これだけの作品を描けるマンガ家はなかなか貴重だろう。他の作品も読んでみたい。