菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール@歌舞伎町クラブハイツ



クラブハイツはキャバレー公演なのに全席禁煙だった。アンコールの「You Don't Know What Love Is」が始まる直前に煙草に火を点けた人がいて、甘い香りが漂ってきた。世間の風潮として嫌煙が日増しに強くなっているのは分かってはいるが、ジャズコンサートをグランドキャバレーでやるのだから喫煙できるようにすべきだ。喫煙できないキャバレーでのジャズコンサートなんてナンセンスだと思う。吸わない人は「どうでも良い。むしろ好ましい」と思うでしょう。そんなことは分かってるけど、おそらくこれはクラブハイツ貸主の「管理上の問題」に帰着すると思う。要はタバコの始末っていろいろ面倒だから、やめてくださいってことじゃないかな。そういうの融通できるぐらいの気概が欲しい。気概なんて死語か。


 クラブハイツは内装がたいへん素敵で、中央天井から吊り下がる百合の花を模したシャンデリアや、その周りに円を描くように配置された室内燈、また壁面に張られた鏡が、数々の照明をあやしく反射して印象的だったがお世辞にも音響が良いとはいえず、おまけにペペサウンドの要である南博奏じるピアノが舞台の都合か電子ピアノであり、感興を削ぐのも甚しかった。残念至極。キャバレーで演奏するというコンセプトを優先して、電子ピアノでしか演奏できないということが分かった時点で会場を変えるという発想はなかったのだろう。音はひどかったが、中盤からだいぶましになってきてた印象があった。酔いが回ったのか、PAががんばっていたのか、会場の音響に耳が慣れたのか、はっきりしない。


 それにしても、バイオリンは高音域がたいへんヒステリックな音色に成り果てていたし、ダブルベースは音が出過ぎで、過去のペペのステージと比べても、有楽町朝日ホールにつぐミスマッチングだったと言えそうだ。ただ、北村聡バンドネオンは、とても素晴らしい演奏もあって(とくに「葬儀」の前奏独奏部)あまり気にならなかった。演奏中、ビール2杯とソーセージの盛りあわせに、パスタを食べて、終演後、韓国料理屋に寄って、さらに冷麺とチジミと混ぜご飯を食べて帰った。怒りのあまり食べすぎてしまってたいへん苦しかった。