映画美学校/音楽美学講座/特別講義:音楽配信サービスについて@京橋・映画美学校



講師:津田大介(IT・音楽ジャーナリスト)
津田氏自己紹介:1999年、Napster(旧Napster社提供のファイル共有サービス)を知ったことがきっかけで、ITと音楽配信のかかわりに興味を持つようになった。

  • 音楽配信のメリット
    • 価格が安い(1曲単位で購入できる・1曲100〜300円)
    • 欲しいときにすぐ購入でき、売り切れがない
    • デジタルデータ(物理的な場所をとらない)→リッピング不要


  • 音楽配信のデメリット
    • コピーの回数制限
    • 音質が悪い
    • ダウンロードしたデータのバックアップが面倒
    • 「モノ」感=所有している感じが薄い


  • シェア世界1位:iT(M)S...PCユーザ向け。22カ国で約8割のシェアを獲得。DRM(コピー制限)を採用。


  • サブスクリプション型配信(会員制)
    • 定額制
    • データのダウンロードは出来ない
    • 料金:月額500〜1500円
    • ユーザ/マーケットは若年層中心
    • 全世界で300〜400万人使用
    • 試聴目的での使用もある


  • 携帯電話向け配信(ダウンロード型/サブスクリプション型)
    • 1999 i-modeで「着メロ」サービス開始
    • 2003 au(KDDI)「着うた」「着うたフル」…現在は伸びている(パケット定額制の普及)
    • そのうちHDD搭載の携帯電話が登場するだろう
    • 日本での棲み分けははっきりしている(市場としては携帯:PC=9:1)



  • 音楽配信略史
    • 1997〜1999 違法mp3全盛期。napsterが1999年1月にサービス開始(2001年廃業)
    • 2001末   レコード会社各社による音楽配信サービススタート
    • 2003.5 AppleによるiTMSスタート→CDより便利!→成功


  • iTMS(現iTS)の特徴
    • 豊富なカタログ
    • 購入しやすい価格(米国では1曲99セント)
    • 使いやすいDRM(コピー制限技術・日本では、レーベルゲートCCCDが出回っていた)
    • 米国:カタログ豊富、安い、コピーOK(制限小さい)
    • 日本:カタログ貧弱、高い、コピーNG(制限大きい)


  • iTMS(現iTS)における1曲(99セント)の売上配分
    • レコード会社(レーベル)...60パーセント(60〜65セント)
    • クレジットカード会社...10〜30パーセント(10〜30セント)
    • 音楽出版社...8パーセント(8セント)
    • Apple...2パーセント(2セント)


  • Appleの成功理由
    • ハードウェアで利益を上げようとする思想
    • iPodの呼び水としてのiTS
    • 旧来のIT企業は例えばゲーム機などでもソフトウェアで儲けていたが、発想が違った


  • 携帯型mp3プレイヤーの発売
    • 2001 iPod(第1世代)発売
    • 2004 売り上げ台数:2640万台(全世界)
    • 2009 売り上げ台数:9億4550万台(予測)
    • MDプレイヤーからの買い替え需要
    • 売り上げから見れば、CD:音楽配信=9:1
    • 米国では音楽配信サービスの発展とともにCD売り上げも回復している
    • CDと音楽配信は共存するのではないか


  • iTMS(現iTS)の特徴
    • メジャー/インディの区別無し
    • バナー広告費無し
    • 知名度が低くても、曲がよければ売れる
    • アフィリエイト/ブログによる広告効果
    • アグリゲータ(代理店)ビジネス...音源等データの委託販売
    • 膨大なカタログがある為、「選ぶ難しさ」が生まれた→ガイド役が必要


  • 日本の音楽市場
    • 1998 売り上げ:6074億円
    • 2006 売り上げ:3515億円
    • CDの売り上げ低下


  • 著作権協会(JASRAC)の使用量徴収額の上昇
    • 1998 98億円
    • 2006 111億円


  • 音楽「CD」市場は不況だが、音楽配信市場は好況
    • 音楽DVD/着メロ・着うたといった新たな市場が生まれ、発展している
    • ライブ(コンサート)市場の拡大...夏フェスの増加(まちおこし絡み)、ライブハウスの増加
    • ミリオンヒット減少(1998年 CDアルバム・シングル計48作→2004年 計1作品シングルのみ)
      • 携帯電話の使用率上昇
      • DVD市場の急激な発展と成熟(1999年 302億円→2000年 1047億円→2004年 3197億円)
      • Playstation2(SCE)の発売がDVD普及に拍車をかけた
    • 消費者の音楽ニーズはCDからDVDへ以降・DVD市場は5年間で10倍になった)
    • マーケティングの問題
      • CDベスト盤乱発(かつてはレーベル移籍時にリリースしていたが、現在では2,3年に1枚出てしまう)
      • 現場の制作力低下・・・ベスト/カバー/トリビュートは安く上がる
      • 制作助成金の廃止・・・レコード会社と音楽事務所(マネージメントサイド)の関係が変化
    • パソコン、ネットを介した違法コピー
      • Windows98搭載PCからCD-Rドライブが標準装備に。
      • 99年頃からCD-Rは1枚100円程度で購入できるようになり、そこにNapsterが登場した


  • CDの売り上げはなぜ落ちたか
    • 上記の通り、複合的な要因がある
    • 消費者意識の多様化/娯楽そのものの多様化


  • プリンスの無料CD配布→コンサートプロモーションの一環として、CDを只で配った
    • 2007年7月24日発売のニューアルバム『Planet Earth』を先行して英国紙デイリー・メール日曜版「The Mail On Sunday」付録として配布
    • 前作が英国では売上不振(約8万枚出荷・印税2000万円)→CD配布の結果、英国内での全21回公演決定(チケット売り上げ30億円)