南博 / 白鍵と黒鍵の間に (小学館)

白鍵と黒鍵の間に―ピアニスト・エレジー銀座編

T子のエピソードが良い。このエピソードはウェブでも何度も読んだ。実に男心をくすぐる。さらっと2時間くらいで読めてしまうが、暗中模索の生き様には、全体的に重いものがある。しかし、読んでいて、けっして重く憂鬱とは感じさせない。

笑いと自嘲の関係について最近考えているのだが、南さんの自嘲=笑いの感覚はなんともいえず東京の粋な感じがする。根拠などないが、どこか乾いているのだ。夜深更し、しずかに刃を研ぐ侍のような…乾いた感じだろうか。この乾いた感じはもしかすると落語の感覚なのかもしれない。南さんはきっと江戸落語がお好きだろう。