映画美学校/音楽美学講座/クリティック&ヒストリーコース高等科講義@京橋・映画美学校



講師:岸野雄一


本日のテーマ:モンド・ミュージックから、音楽聴取の変化を考える

  • ♪Martin Denny / Quiet Village

ベリー・ベスト・オブ・マーティン・デニー

  • モンド・ミュージックとは何か
    • かつて第二次大戦で南の島に行った元兵士たちの慰安や追憶のために1960年代に作られたエキゾチックな音楽などが、1990年代に再評価されて名付けられた。イタリア映画『世界残酷物語』のサウンドトラックを入手できることが当時のこの種の音楽の登竜門であるとされ、その原題:MONDO CANEに由来する。
    • 1990年代、岸野雄一周辺のレコード愛好家たちによってレコードの貸し借りが行われていた。いわゆるロックの名盤を海外から通販で取り寄せていたが、梱包材の代わりに、ダンボールとLPの間に詰められたクズレコードを聴いてみたらこれが面白く、クズレコードの音楽をノイズミュージックとして聴くようになる(モンドはジャンルというより、音楽の聴取方法の提示だったが、やがてレコード屋の棚の名称となってしまう)。結局、岸野らは米国にクズレコードの買い付けに行き、大量に持ち帰る。これを在庫商品としてレコード屋Manual of Errorsが開店するに至る。


  • 雑誌『RE/SEARCH』(特集:Incredibly Strange Music)が1993年に発売され火付け役となった。

Incredibly Strange Music (Re/Search ; 14)

  • 本邦では書籍『モンド・ミュージック』(1995年)によって広く知られるようになる。当時はリブロポートから刊行されていたが、同社の出版事業とりやめに伴い、現在はアスペクトから刊行されている。この本が刊行されたあと、米国へレコードの買い付けに赴いたところ、あるレコード屋の棚に同書が置かれていたとのこと。投売りもしくはゴミ扱いされていたその他コーナーのレコードの値段は急騰した(1ドル→100ドルくらいの感じ)。


  • SABPM:Space Age Bachelor Pad Music とは何か
    • 「ここではないどこかへつれていく」音楽の機能はexotic(外へ)になり、宇宙時代もあいまってスペーシーなSEなどが用いられるようになった。郊外に住む独身貴族の男性たちがマリワナをきめつつ、水槽の熱帯魚をぼんやりと眺め、SF小説片手にカウチに寝そべりながら聞いたり、独特の音の位相をあらわすレコードをサウンドチェック代わりに使ったりした。
  • ♪Martin Denny / Japanese Farewell Song
  • 宇宙(まだ見ぬ世界)→理想郷←南の島(楽園)
  • 宇宙と内面→サイケデリック音楽


  • 1990年代のポップ音楽
    • 過去の編集による音楽
    • サンプリングによるおいしいとこどり
    • ほんらいムードを醸成する機能を持った音楽に対して、ひとりで音楽/音/サウンドスケープに入り込んで聴くようなリスニングスタイルが成立する。先進国の都市に住む青年たちの独身貴族化、東西冷戦体制崩壊による全世界的な大文字の「物語」喪失、CDの普及による旧譜と新譜の混在・フラット化、テクノロジーの進歩による編集音楽の一般化などなど理由はいろいろ考えられる。いずれにしても音楽の聴取についての大きな転換そのものであり、またその転換をうながした。




  • Joe Meek

I HEAR A NEW WORLD

  • Raymond Scott

Raymond Scott Quintette - Powerhouse

Soothing Sounds For Baby: Electronic Music By Raymond Scott, Vol. 1, 1 To 6 Months


  • Jean Jack Perry & Garshon Kingsley (Perry&Kingsley)

Jean Jack Perry - Baroque Hoedown

Gershon Kingsley - Popcorn


ケージ:エレクトロニクスとパーカッション

Song Cycle [12 inch Analog]

宇野誠一郎 作品集 II