ジム・ランビー展@品川・原美術館



 なかなか面白かった。しかし現代美術のはらむ難しさは現代社会にたいする批評的行為そのものとニアリー・イークォールではないだろうか。ジム・ランビーの作品はキッチュさと不安の象徴に彩られた数々であった。よくいえば分かりやすい。チャック・ベリージョン・レノンマイルス・デイビスビリー・ホリデイといったポップアイコンのポートレイトを粗めに拡大した上に、油絵の具で描いた花びらで鎮魂している。しかしながら、このポップさはしばしば安っぽさにつながりかねず、文脈をずらせば鎮魂ではなく侮辱と受け取られかねないのではなかろうか。また「Sonic Reducer」(音の早さですり減らすもの)というレコード針をユーモラスにオブジェ化/象徴化している作品など、作者が音楽に耽溺/愛好していることはよくわかった。しかし音楽にあまり関心のない現代美術ファンにはあまり訴えるところがないかもしれない。
 いちばん大きな立体作品は「Train In Vain」と題されていた。Vainは無益な、とか虚栄の、という意味であり、こういった諧謔的な身振り(アイロニカルなさま)、とくにネーミングが現代美術にはありがちなのでしかたがないが、作品そのものにはポジティブなバイブもあったので、混乱するのであった。現代美術の文脈理解ができるよう勉強したいものだ(作家が混乱や不安感を表現しようとしているものが多いのかしら)。