アレクサンドル・ソクーロフ監督 / 太陽 (原題:The Sun)

太陽 [DVD]


陰鬱なあかるさに、優雅な退屈さが上質に定着された物語。人間としての天皇を演じるイッセー尾形をユーモアをまじえて神話的に描き、その苦悩と屈辱とを映像美と禁欲的な演出からエレガンスの域にまで高めている。敗戦を目前に控え、海洋生物学者として学問に打ち込む昭和帝を描くことで、彼が人間宣言をする前からすでに人間であったことを、説得的にしている点が印象的である。ソクーロフ監督の人間への理解は深い。
蛇足ではあるが、政治的な問題をうまく回避している/できている点は、旧ソ連で鍛えられたであろう監督ならでは、という気がする。