日本ポップス詞史のとある系譜



最近、堀辰雄の詩集を何気なく読んでみたのだが、笑ってしまうほど浪漫主義であった。で、唐突ではあるが「それにしても松本隆における堀辰雄の影響は凄いな」と思った。言うまでもなく、堀辰雄エピゴーネンというよりは、オマージュ的な何かである。


はっぴいえんど時代の彼の作詞はスタイルそのものがポスト堀辰雄なのだが、80年代に入るとそのエッセンスとでもいうべきものを巧みに取り入れた作風に変化する。簡単にいえば、失われたイノセンスへの憧憬がテーマである。その憧憬が風街という架空の情景に託されている。あるいは風街を背景に語られている。賢明な松本ファンならお気づきになっているかと思うのだがが、例えば「風をあつめて」と寺尾聰の「ルビーの指輪」の世界観はつながっているのである。


この世界観を継承するのが、図書館(バンド名です、念のため)の足立守正氏だという仮説でいずれ論じてみようかと思うのだ。岸野雄一さんにことあるごとに「図書館の歌詞論書こうよ〜」と声を掛けて頂いているので、いっちょぶちかましたいんだけどね。なかなか・・・難しいものです。