穂村弘 / 世界音痴 (小学館)
タイトルが良い。これが「世間音痴」だったりすると、ずいぶん話は身近なところへ引き寄せられてくるのだが、「世界音痴」とすることで詩的な趣を増している。
しかし「世界音痴」とは…なんと無防備でさびしく、ブンガク的なタイトルなのだろう。とるに足りない日常のスイッチからはじまった妄想がうねうねと続いたり、
うまく聴き取れない「世間」からの便りを、うたのことばに翻訳して、彼の、そしてわたしたちの「世界音痴」に昇華させていく。
これは穂村のブンガクである。むろんブンガクというのは、言うまでもなくことばの森に住まう人にとって生きるということである。
かなり気に入ってしまったので、感想文も大げさになってしまった。ので、ここで終わる。
最近聴いたCDs。
ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)ほか / ブラームス:ヴァイオリン協奏曲&二重協奏曲
'30年代末のモノラル録音。どうも小生はモノラル録音の音質に惹かれるところがある。それはジャズでもクラシックでも同様で、
このアルバムではハイフェッツ氏がきわめて技巧的なヴァイオリンを披露しているが、ステレオだったら聴き疲れするような演奏ではないかと思うくらい。
ミルス・ブラザーズ / Cocktail Hour
きわめて温かみのあるヴォーカル・ワーク。ハーモニーはいかにもモダンな感じでたまらない。
パーカッシヴなボーカリゼーション等聴き所満点だが、ライナーノーツ、レコーディングデイツがないのが玉に瑕!。
レイ・エリントン・クアルテット / That's Nice
恐らく無名の楽団。演奏はなかなか洒脱な感じ。ファッツ・ウォーラーのカバーもしておりおもしろい。
ファッツ・ウォーラー / Ain't Misbehavin
いたって陽気なストライド奏法が楽しい。しゃがれたヴォーカルの魅力もじゅうぶん。
アンドリュース・シスターズ / Hit the Road
明るくフレンドリーなボーカル・グループ。'38年から'44年までの録音を収めている。(恐らく無名の)ヴィック・ショーエンズ楽団演奏。