Tangosteen Recording -1

 午後から町田へ。3ヶ月ぶりに、コウリョウくん、ジュンペイくんと会う。会うのはサタデー・イブニング・ポストに出演してもらった「華火」以来なのだ。電車の中では乱歩「吸血鬼」を読む。ううむなかなかおもしろい。これ、70年以上前の作品なんだなあ…。


 午後3時過ぎから、ノブくん、アンドゥさん、プロギタリストのシイナさんを加えた6人で、音楽談義もしつつ、イベントについてのアイデア出しをする。ユーモアのある、アンチ・クールなものにしたいなあとかテーマは「ヒゲ」だとかいろいろアイデアは出て、方向性も見えてきたけど、これをまとめるのは難しそうだ。みんなはかなりやる気があってその点は頼もしいのだが。ハコや日程を決めたりして、具体的な案件を決めてしまったほうが、うまくいくかもしれない、と思うけれど、いま、ぼくの中には迷いがある。イベントを現実逃避の道具にしたくないなあ、という気持ちと、今やらなきゃもういつやれるか分からないな、という気持ちが両方あるのだ。我アンビバレンツを知る多少。遊ぶの禁止??


 午後6時過ぎからコウリョウ邸の母屋からホットプレートを借りてきて、みんなでお好み焼きをする。ノブくん(「華火」に主演してくれたバンドではマンドリンを弾いていた)が買ってきてくれた山芋のお陰でかなりふんわりさくっとした味わいのなかなかステキなパーティーになる。8時前くらいから、ぼくは聴かされていなかったのだが、セッション開始。セッションというか、実は、サタデー・イブニング・ポストのアルバムを作る計画があって、コウリョウくんのお兄さんがスポンサーになって、いよいよレコーディングを開始するところだったのだ。今日はその1日目。ノブくんは、マンドリン、アンドゥさんは、エフェクター類や、カオスパッド、サブの卓担当。シイナさんはエフェクターを通して、多種多様なプレイを見せてくれた。ギターとは思えないような音から、ロバート・フィリップ並のプログレギター(笑)。とても上手で、録音の中では常にみんなを引っ張っていく頼もしい感じ。コウリョウくんはメインの卓と、コンピュータを主に使用。アコギも弾いていた。ぼくは、最初ピアノを弾いていたのだが、活躍も出来ず、ヘタクソパーカッションに転じた(笑)。


 最初の2時間くらいは、ほとんど録音の仕方やアンサンブルを確かめる方向で、録音はあまりせずにジャム中心にすすみ、曲によっては騒音音楽(笑)、あるいは不穏なアンビエント、もしくはプログレ風、音響系ノイズ派になったりして面白かった。零時過ぎくらいからは、だんだん煮詰まってきた。コウリョウくんのお父さんは幼稚園も経営しているので、その幼稚園の子ども達の教材として使う絵本が沢山スタジオの脇に積んであった。それを
ぼくがぱらぱらとめくっていたら、コウリョウくんが「ウツボくん、ポエトリーリーディングをやってよ」というので、急遽、コウリョウくんの家の近くで丁度火事があったことと、雨が降っていることを題材にして、ミニマルっぽいトラックの上に人力でミニマルなポエムを乗せた。延々と「女子寮が焼けた。雨が降っていた」と言っているだけなんだけど(笑)、それをアンドゥさんがいろいろエフェクターで変化させていて、時には「女子寮が降っていた」なんてふうになるのがおもしろかった。まじめに8分くらい演奏してから、MDの録音をプレイバックして聴いて、みんなで爆笑。もう一遍、虫をテーマにマジメなポエトリーリーディングをやって、それも聴き返してみたらかなり狂っていておもしろかった。マジメにやればやるほど、面白くなったけど、みんな疲れてきたので、録音は3曲で切り上げて、2時過ぎには全員スタジオ(広い)で就寝した。