江戸川乱歩 / 孤島の鬼、泉昌之 / かっこいいスキヤキ



 江戸川乱歩「孤島の鬼」(創元推理文庫)読了。同性愛を絡めた冒険もの。主人公に好意を寄せる男の父親の鬼畜ぶりが白眉だ。自我肥大型人間の典型例(?)で、かたわの人間を人為的に製造し、売り飛ばし、或いは屋敷の中にある蔵に閉じ込めてみたり、血も涙も無く、殺人を繰り返したり。乱歩は自作自註で、鴎外の随筆に支那人が見世物の為に不具者を製造する話がありそれに着想を得たと記している。昭和4年の作品。ということは1929年発表か。
70年以上前の作品になるが、決して古びてはいないように思う。


 まろんさんからお借りした泉昌之「かっこいいスキヤキ」(青林堂)読了。80年代初頭に、「ガロ」と「宝島」に発表した作品を、14篇収めている。70年代の関西系劇画のパロディーの香りを漂わせつもとるにたりない生活に着眼点を置いた作風が出色。おもしろい。弁当の食し方を夜行列車の中で延々と思案する名作「夜行」はいうまでもなく、円谷プロからクレームがつきそうな(?)ウルトラマン
パロディーものも良いし、「夜行」のモチーフを個から複へ広げた「最後の晩餐」(スキヤキの食し方を集団の中で、ひとり悶々と考える男の顛末を描く・笑)や、少女マンガのギャグパロディーかと思わせつつシュールな展開を見せる「だってアトミックLOVE」もなかなか捨てがたい(笑)。泉昌之はたしか兄弟ユニットの連名ペンネームだと記憶していたのだが、自信がないなあ(苦笑)。