麻布

山下スキルさんが転居されてそのパーティーだというので、西麻布の氏のご自宅へお邪魔する。渋谷駅から都営バスで南青山七丁目駅下車。しばらく歩いてから横断歩道を渡った。良く憶えてるのだ。自力で辿りつこうと必死だったから(笑)。番地名を見ながら見当をつけてあるき、たぶん、20分ほど歩き回ったと思う。午後4時前、山下邸の玄関に辿りついたときは、気温のせいもあり軽く汗ばんでいたほどだ。春は嫌だ。


山下邸は、スキルさんのご実家に当たるわけだが、立地条件と敷地面積もさることながら、サクセスとかハイソとかそんなようなキーワードが次々と浮かんでくるアーベインな感じ。空間の使い方が豊かな印象を受けた。最寄の駅前で買ったお土産を氏に手渡した後は、ゆっくりと酒を飲みつづけてばかりいて、ぼんやりした。BROWNさん、たんぽぽさん、かたるさんに自作コンピをお渡しして、久しぶりにお会いした組谷さんにはコンピの曲目についていろいろ訊ねられ、お答えしていた傍らでまろんさんはスキルさんのご賢弟と猫の遊具を作られていた。ムネカタさんがいらして、モー娘。講座がはじまったり、けいさんのひみつ音源(菊地関連)が、かかっていたり、しごくイイ塩梅だったと思う。ぼくも酔っ払ってからステレオセットの前に陣取ってキャラヴァンやアート・ガーファンクルやスケッチ・ショウやビル・エヴァンズやジェフ・ベックをかけさせて頂いた。あまりお喋りの輪には加わらなかったように思う。その後、スキルさんのお友達にご挨拶したりもしたのだが酔っていたため、あんまりはっきりと記憶が無い。記憶が飛んでるほどではないですけど。そのような飲み方はしたことがないためです。念の為。仮に記憶を飛ばそうとして多量に飲んでみても、ぼくはその前に寝てしまう。


午後7時頃から、mftさんとかたるさんが「スパンクス、行くー」みたいな雰囲気だったので、これ幸いと便乗してタクシーに乗って渋谷オン・エア・ウェストへ。山下邸のゆるやかな雰囲気があっという間に消えて、街の喧騒が耳につくようになり否応なく酔いも醒めていった。丁度会場に入ると、イルリメが、がんばってラップをしていた。これが40分くらいだったかな。つなぎのDJがあって、GROUPというグループ。ミニマルロック。なんとなく音響な感じ。夜、立ちっぱなしで聴く音楽ではない。白昼夢の様にまどろみながら、そう、山下邸のリヴィングみたいなところで、うとうとグルーヴに身を任せたい感じだ。まあ、こういう音響を意識した音楽はプレイヤーが一番気持ちいいものだと思うけど(楽器を触ったことのある方なら、リフレインするフレーズを繰り返し演奏するのが思いの外快感であるということに同意していただけると思う)、下手するとプレイヤーの脳内オナニズム音楽になってしまうので要注意だ。こんなんだったらコウリョウくんのサタデーの方が面白いやい、と思いながら聴いていた。ソプラノサックスとリードギターががんばっていたのは認めますけど。40分で3曲くらい。で、またつなぎのDJがあり、会場の空気が思いの外悪かったので、その間に外に空気を吸いに行ったりした(笑)。


 スパンクスがようやく登場。9時半ころだったろうか。今日のお客は、誰が目当てだったのだろうか。ひとり隅っこのほうで踊り狂いながら会場を楽しく見ていたがあんまり反応は良くなかったし、「もういいよ」という声も聞こえた(笑)。まあ個人的には「インターナショナル・ラブ・コンフェランス」「普通の恋」「ダンシング・クイーン」が聴けたので良かった。とくに「普通の恋」は名曲だとは聴いていたが、とてもグルーヴィーなトラックで感激した。会場は、ほぼ無反応だったけどやっぱりカラオケで歌ってると、歌モノグループとして受容されてしまうものなのだろうか。まあ「普通の恋」って歌詞がどうしようもないと思いますけど(苦笑)。だから踊るための音楽だろうと思うんだけどなあ。打ち込みでああいったグルーヴになるのって凄いと思うんだけど。岩澤瞳がいつもと違う感じだったので、あらメイクが変わったのかしらんと思ったら、案の定、スパンクスのマネジャーもメイク担当の人も変わったということだった。観客としてはそうでもないけど、それって舞台に立ってる人にしてみれば新規巻き直しっていうか大きいことなんだろうな。今日はそんな感じが舞台から感じられなくもなかった。菊地さんはかなり調子悪そうだった。岩澤瞳のボーカルはだんだん安定感が増していってると思う。決してうまくはないと思うし、あまりうまくなっちゃうと今のスパンクハッピーは終わっちゃうんだと思うけれど…。「ダンシング・クイーン」は歌詞を見ながら歌っていた。トラックが荒廃&頽廃ヴィジョンなデスデス毒ですな感じで、かっこよかった。セカンドアルバムが楽しみだ。


 渋谷駅からひとりで帰る。ぼんやりと車内に目をやりながら、ジェフ・ベックの「ブロウ・バイ・ブロウ」をずっと聴いていた。とてもイイ感じの音楽だ。こういうクロスオーバーな感じがなんでそんなにいいんだろう?自分でも良く分からないのだ。どっかけだるい感じ?それもあるが「ブロウ・バイ・ブロウ」が良いのはやはりそのファンク志向なサウンドだろう。たぶん弦が入ってあんまり甘すぎるとこんなに聴けないだろうし。そういやまろんさんが山下邸でかけていたCTIのアルバムは凄くあの空間にあっていたような気がしたなあ、あの遊具がなければ、もっとアーベインでハイソな感じで―などと愚にもつかぬことを頭の中で弄びつつ午前零時前に帰宅した。