倉多江美 / 傑作集3 栗の木のある家 (フラワーコミックス / 小学館)



収録作総ページ数の6割を「逸郎クンシリーズ」が占めている。「逸郎クン」の
クンってとこに注目だろう。こういう表記は未だにあるのだろうか。倉多の丁度
20年前くらいの作品に「○○は××にラブしているのでした」とか、「△△は
□□にお熱なのよ」などというセリフが、出てくるところになんともいえない
感銘を覚えたのだが、そういうところは別に感銘を覚えるべきところではない
ような気もする。お熱、ってのはもう古典的な表現だよな、と思うのだが「ラブ
している」というのが堪らない。これからはぼくも「ラブし」ようと心に誓う。


しかしこの人の描く人間は極端にデフォルメされていて、登場人物は全員内臓
疾患を抱えていそうに極端にやせぎすなのだ。足などまるでマッチ棒のようだ。
こういうおそらく時代的な記号表現、表層的な部分にとらわれてしまうのが、
なんともやりきれない感じなのだけれど、まあ仕方がないと思うのだ。齢22に
して、少女マンガを処女体験しているようなものなのだから…。「受難曲」
(むろんパッシオンと読ませるのだ・笑)という短篇がなんとなく心に残った。