ビデオ『ウェストコースト・ロックの奇蹟 Vol.3』(ビデオアーツ)鑑賞。



なぜ第3巻を観るかというと、1巻も2巻もなかったから借りられなかったのだ。


1. The Byrds 「So You Want To Be A Rock&Roll Star」(1'56")


オープニングから曲が流れ始めて、それは明かにライブ録音の音なのだが、
途中から挿入されるスタジオ演奏がもういかにも、曲に併せて編集して
みました感に溢れている。そんないらいらする構成には、評価も何もない。


2. Country Joe 「Freedom Is A Constant Struggle」(3'44")


カントリー・マクドナルド・ジョーという人を、ぼくはよく知らないのだが、
彼の『Electric Music For The Mind And Body』という作品がいわゆる
アシッド・トリッピーな作品らしい。1972年、オランダでの演奏で、曲調は
いかにもなダウナーな雰囲気をもつフォーキーなもの。時代な感じだ。


3. Santana 「Jingo」(8'51")


サンタナバンド。音は悪いが、ものすごい熱気でかなりかっこいい。
特に打楽器部隊がとんでもない変態ばかり。みんな一発キメて演奏して
いるみたいだ。キーボードがばりばり弾きまくり、とてもファンキー。
サンタナはハードロックばりのリフを合いの手の様に入れている。
ちなみに「Jingo」はサンタナのデビュー・アルバムに収録されている。


4. The Eagles 「Witchy Woman」(5'11")


テレビ番組の収録映像(これまたオランダのものらしい)から。
「Witchy Woman」はイーグルズのデビュー・アルバム('72年、発表)に
収録されている。ここでもやはりみんなキメているようだ。ボーカルと
ギターのふたりがプレイ中にへらへら笑いながら見詰め合っているのは
気味悪い。しかしドラムスを含めて、繊細なボーカルワークが魅力的だ。


5. Grateful Dead 「One More Satrurday Night」(4'30")


楽曲はシンプルなロックンロール。ブギー的なテイストもあり'70年
当時随分オールドファッションだったのではないだろうか。しかし
観客はノリノリ。とくに女性客が激しく踊っている。いかにもライブ
バンドといった感じの雰囲気は決して悪くない。


6. Quicksilever Messenger Service 「Mojo」(4'01")


演奏している曲は、マディー・ウォーターズの「I Got My Mojo Working」 と
関係があるのか知らないが、ブルーズっぽい楽曲。ボーカルの男(ディノ・
バレンティ)の凶悪な面構えが印象的。


7. Ry CooderGoin' To Brownsville」(2'55")


先に出てきたイーグルズとまったく同じ背景セットで演奏している。
バンドも無くひとりマンドリンで弾き語り(!)。これがひどくヒップに響く。
玄人好みというか、ライ自身がコアな音楽マニアだったので、ファンも
そんな連中ばかりだったのだろう。ルーズなボーカルが魅力的。クール過ぎる。


8. Jefferson Airplane 「Today」(2'06")


いかにも沈鬱にサイケデリックな感じだった。あまり印象がない(苦笑)。
カメラワークがおかしかったことだけ、印象に残っている。


9. Janis Jopplin 「Summertime」(4'41")


1969年、スウェーデンでのライブ映像。ジャニスはとんでもない存在感だ。
薬で潰したのかそのしゃがれた声は激しくブルージー。この人はきっと
ブルーズに憧れてわざと声を潰してしまったんだろうなと思ったり。
いかにも早死にしそうな雰囲気に溢れる歌唱が、いつまでも耳に残った。


10. The Doors 「The End」(13'58")


ラリっているジム・モリソンに客席からもれる失笑が印象的。14分にわたる
ダラダラした演奏。インプロヴィゼーションとも呼べないそれは正直退屈だ。
ファンにはある意味貴重な映像なのだろうが、5分ぐらい観てから消した。


1989年に英国のCCTVというケーブルテレビ局が制作した番組らしく、いかにも
ケーブル向けの手の抜いたゆるゆるの構成が気になる。ただやはり'70年代前後の
ロックバンドの映像をまとめて観ることは難しいので、おもしろかった。激しい
ドラッグ臭と、音質の悪さを超えて伝わってくる熱のようなものが確かにある。
しかしもうちょっと気合の入った作品を商品化して欲しいものだとも思う。
ベストアクトはやはりサンタナだろうか。イーグルズもなかなか良かったけど。
ジャニスはタナトスの権化のようなパフォーマンスで観るのがちょっと辛かった。