TENKO ヴォイスパフォーマンスシリーズ1 TENKO Voice on Voice@北沢タウンホール
GOOD VIBRATIONS
TENKO ヴォイスパフォーマンスシリーズ1
TENKO Voice on Voice at 北沢タウンホール(2000.6.9)
出演:天鼓(声)、巻上公一(声)、一楽儀光(パーカッション)、ヴォイス団Kuu
声。人の声は、なんてエロティックで、さびしくてかなしくてうれしくて、
暴力で、かわいくてやさしくて、セツナいんだろう。緊張をもって発せられる裸の声が、ぶるぶるきた!
初めての下北沢の駅はずいぶんちっちゃいかんじがした。
どっか田舎、昔の東京みたいな雰囲気をかんじた。
駅からの道の両脇に並ぶ店も、こどもがあつめるがらくたみたいにちょこちょこしていた。
定食屋で、メンチカツをほおばり思った。このざわざわしたかんじがここに住んでいると
いとおしくかんじるようになるんじゃないか、と。
7:00開場。PAは使わないのかなと思ったらミキシング・コンソールもスピーカーもあった。
ステージの上手にドラム・セットが置いてあり、照明でその影が舞台の後壁にゆがんで大きく映し出されている。
天鼓さんのあいさつ。
「今日は声のコンサートです。これはふつうの声がいかにアートになりうるか、という試み。
全て即興でパフォーマンスし、互いにコミュニケーションします。
難しいことをかんたん(みぢか)な手段で表現する、でもこれはけっこう難しいことかもしれない。」
まずヴォイス団Kuuのメンバーによるパフォーマンス。
人の体の動きがすごく面白い。
かなしくてさびしくてやさしいひびきが空気の粒にまじる。
声の顔つきがどんどん変わる
つづいてTENKOさんのパフォーマンス。
まるでその声、表情は次々と人格が変わっていくようで、すごく想像力を刺激した。
パフォーマンスをかんじながら、みているぼくの中で次々とイメージがわきおこってくる。
彼女は弱々しい声のおじいさんから、寡黙な独裁者となって演説した。
歓びに満たされた女性から、愚痴を言うおばあさんになり、
ここではないどこかの世界で次々と回されるオペラチャンネルで歌っている無数の女声になった。
感情がほとばしっている!
Kuuのメンバーが又やってくる。目に見えないなにかを円になって回しっこしている。
自分の中にある何かを伝え合ってるのかもしれない。
これは原初のコミュニケーション!?すごくユーモラスで笑った。
「どこを切っても自分の声、それが表現ていうことなんです。どんなに恥ずかしい声でもそれを隠すことなく出すほうがいいと思うんです」
やかんの水が煮立った時のような声や、小鳥がさえずるような声、トゥヴァ式のホーミー<ホーメイ>も披露してくださった。
ホーメイは、上で鳴ってる(高音)が、上がり下がりするのがよくわかってなんとも言えず気持ちいい。
それからワークショップ。
巻上さんと声のパフォーマンスを一緒にしている仲間達、観客も参加して、みんなでいろんな声のものまね。
ぼくも参加してすごく開放的で気持ちよかった。
表現する上での葛藤・緊張は当然あるのだろうけど、これはやはり違うことなくパフォーマーが一番楽しいんだ、というのを肌でかんじた。
最後にTENKOとKuuのメンパーによるパフォーマンス。
彼らはまるでなにか生物の体の中で起きている現象みたいに見える。
清流を泳ぐ魚のように揺れ動くTENKOと、
Kuuのメンバーが声とからだを使ってコミュニケート(反応)していく。
ぼくは、ふしぎに安らいだ。
たとえばこのパフォーマンスを見て、仮に「前衛だ」とか否定する人がいるとしよう。
そういうリアクションはこういうプリミティヴな表現に対する
そのひとのもつ感受性を如実に示してしまうかもなど、と思いながら帰路についた。
楽しかった。
本当に楽しかった。
・・・声。人の声は、なんてエロティックで、さびしくてかなしくてうれしくて、暴力で、かわいくてやさしくて、セツナいんだろう・・・
初出:vov