これは恋ではない (小西康陽氏の雑文集、みんな読もう)

昨晩はひどい鬱から抜けかけたところで、バイト先のマネジャーから電話がかかってきた。明日どうしても入ってほしいとのこと。6時過ぎに入ることを条件に、承諾した。マネジャーは「助かるわー」と実に事務的に返事をして電話を切った。そういうこともあっていつもより少し早く寝ることにした。11時半には床についていただろうか。


朝。ものすごい悪夢だ。しかも最近セクシュアルな事象に関係する悪夢が多く、今日は特大2本立て!詳細は、ちょっとここでは言えないことなので、割愛させていただくとして、おそらくこの夢は最近の精神状態と、睡眠時間の増加に深く関係しているのだろうな、と思った次第だ。


4限が終わって、コンピュータ室に向かい、少し休息する。いつも巡回する掲示板やホームページを見て、自分の掲示板にレスを返しているとあっという間に1時間が過ぎる。校門を出て、タバコに火をつけるときが、最近ある種の幸福の瞬間になってきた。きちんとニコチン中毒になったからだろうか?それともフロイド先生おっしゃるところの口唇期の欲望を満たしているのだろうか。キスなんて・・・・・・もう***ぐらいしていない。


果たしてバイト先について、「おはようございます」(なぜその筋の業界でもないのに、あいさつが「おはようございます」なのか合点がいかないが、まあ良いとして)、と言ったら。果たして果たして、今日のシフトは花子(仮名)だった。


びっくりした顔をして、彼女は言った。

「あれウツボくん、今日だったっけ?」

「昨日さあ、マネジャーから電話が入って、急遽来てくれって言うんだよ。だから来たの」

「へえ」

「花子さん、なんか顔色悪くない?疲れてる?」

「あー今日すっぴんだからねー(笑)。それに1限からだったの、学校」

「そっか」



彼女は、けっこうバシバシ物を云う人である。

ウツボくんってさー、いつもぼーっとしてない?」

「してないよ。失礼な」

「してるよ」

「あのねえ、いつもぼーっとして歩いてたら、交通事故だよ、交通事故」

「そういう言い方もさー、なんかぼけてるんだよねえ」

「ぼくってそんなにぼけてる?」

「ぼけてるよー」

ぼくはまるで痴呆老人にでもなったかのように悲しかった(笑)。



まあ、今日は、暇だったので、わりと、話したような気がする。好きな女の子と話せただけで、わくわくするなんてずいぶん久しぶりだ。最近鈍感ながらもようやく気づいたのは、ただ単に彼女は誰にでも愛想の良い、活発な女の子ではないのか、ということだ。ぼくはどうも人の好意に慣れていない節があるし、それが異性となるといわずもがな、である。って、かなり書いていることが、アレですけど(苦笑)大筋では間違っていないだろう。


帰りは偶然、エレベーターの前で一緒になって途中まで一緒に帰った。彼女はぼくの顔を見るなり、猛烈に顔を崩して、笑った。「そんなにぼくの顔がおかしいのだろうか?それともおかしいのはぼくの頭なんだろうか?」一瞬真剣にそう考えた。たぶん両方ともあたってるんだろう。なんで彼女はあの時笑ったんだろう?ふふふ。どうしようもなく、これは恋であるらしい。ぼくは彼女と別れてから、歩道を歩きタバコしながら気持ちが激しく高ぶって、それを抑えられず、思わず泣いた。よよよ、と。