「転校生」(大林宣彦、'82年)

を観る。これは例の尾道三部作の一作で…。ってまあ、それは良いんですけど。
最近人に薦められたものは、偏見なく摂取しようという感じで散財しているのですが、
うん、いろいろ観たり聴いたりするのは面白いな、という感じです。


で、「転校生」も相変わらず(っていうか「さびしんぼう」と似た
テイストなんだけど)、ラブコメタッチなんだよな。大林監督は
少女マンガなんかも読んでるのか。で、この話はぶっちゃけていえば
石段から転げ落ちた「転校生」の女の子と、幼馴染の男の子の意識が
入れ替わるという(むろん肉体はそのままで)そういうお話なのですが、
なんか心温まるというか、道徳的なテイストがあるなあ、と思いました(笑)。
文科省推薦な感じがなきにしもあらず。教訓的な感じではないですけど。


偶然の事故で、男の子の肉体に女の子の精神が宿って、女の子の肉体に
男の子の精神が宿るという非日常。そんな状況でお互いを気遣う心が
生まれる、人を思いやる心が、この「二度と戻ることの無い過去への捧げ物」
(ノスタルジー)に準じる副次的なテーマというかね。また主演の尾美としのり
小林聡美(見事な怪演!上手すぎ)の、ちょうど微妙な年頃というのもある。
これはホント良い時期に撮ったな、と思います。彼らがもうちょっと若くても、もう
ちょっと大人になってても、この爽やかかつ、蒼い感じは出なかったと思う。
女の子が女に、男の子が男になっていく1歩手前の空気感をとっても上手く
切り取っていると思います。で、又とってつけたようなクラシックの
名曲群も、なかなかはまってるんだ(苦笑)。ちょっと恥ずかしいけどね、
全編に渡って。「薄幸の美少女」キャラも出てくるしね。大林監督は、
つくづく「薄幸の美少女」が、好きなんだねえ。「薄幸の美少女」が象徴
する何かが、好きなんだろうけど、ちょっとセンチメンタルに過ぎるかも。
彼は、極めて個人的なオブセッションを、手際良く、劇場映画にできて、
おまけに商業的成功を納めているという所がなんといっても凄いと思います。
彼がもし映画監督になっていなかったら、どんなおっさんになっただろうか(笑)。