細野晴臣 / 泰安洋行 (1976, PANAM/CROWN)



まあ、上にほとんど全部書いたも同然なんですけど、「泰安洋行」は
ぼくの中ではちょっと、密度濃いかな、という感じですね。もちろん
大好きですけど。まあ、でも密度濃いってのは、1曲目からちょっと
おかしい人の音楽だからね(笑)。「蝶々-San」はじまって曲に引き込まれて、
ホーギー・カーマイケルの「香港Blues」の冒頭でドラが鳴り響いたら、
もう覚悟を決めなきゃならない(笑)。おいしい覚悟だけど、これに
とりつかれると、悪魔の音楽に魅入られて身を持ち崩すというか(笑)。
「トロダン」よりも各段にアルバム全体の完成度も高いし、細野さんの
場合それはやはり音楽のもつ物語性の強度も同時に意味するように思うので、
要は、なんだろうな、危険なんですよ(笑)、甘美過ぎて。耳から摂取
するドラッグみたいなものだと思うし。まあ、音楽ってものがそうなのだ、
とも言えなくはないと思いますが(笑)。ていうか、より正確に言えば、
ぼくにとっての音楽はそういうものであると(苦笑)。このアルバムは
そういう意味で、ぼくにとっては強烈なドラッグみたいで、浸りきれない
こわさみたいなものが未だに少しありますね(苦笑)。「マジかよ?」って
いうひとがいるかもしれないけど、マジなのよ(笑)。ちなみにこのアルバムの
英題は「Bon Boyage Co.」で、「トロダン」の感想で、「ボンボヤ」と略記
しているのは、英題に因んでます。あんまり「ボンボヤ」とは言わないけど。