村上龍 / 最後の家族(幻冬舎)



村上龍は一貫して「外へ出る」とか、「脱出」を作品のモチーフにしている。
「いま在る場所からどこかへ」というのは、文学の古典的なテーマです。
さかのぼろうと思えば、聖書くらいまで行くだろうし(出エジプト記とか)。


この作品も、そう独創的ではないと思うのだけれど、やはり文体がすごいんだなあ。
文体と、あと視点ですね。家族4人からのパースペクティヴが見えること。
近年の村上龍はエンライトメントしよう、という意思を感じさせる作品が多くて、
まあ、良いんだけど、政治家にはならないでほしいなあ、と思います。


ある意味、作家と言うのは、真摯な政治家であれかし、とぼくは思っているんだけど。
真摯すぎて徒党を組めない政治性というのが、文学にはあっていいと思うしね。
しっかし、文体が独創的ということは、脳梁を流れる血液も多そうですね。いいなあ。
昔っからサッカー好きだし「テクニックこそ思想だ」とか言いそうだよね。このひとは。