1-2 「処女」に対する「童貞」



「女というジェンダーが、異性に触れたことがあるかどうかに関して有徴であったことは否定しえない。それに対し、「童貞」という状態への関心の低さは、これを表す言語の貧困と相まって甚だしい」(12)とし、「男にとっての童貞であること、あるいは童貞喪失に考えてみ」(12)ることになる。


まず筆者は例として二葉亭四迷の『平凡』を参照し、主人公の男、古屋が、下宿先の雪江に物理的な接近を受け、その性欲にもかかわらず、性交する=童貞喪失するのがおそろしくて逃げ出すのを、「古今東西の文学を通じて、珍しいといってもいい」(15)という。そしてこの初体験時の、おそろしさが近代に属するものなのかそれとも前近代に属するものなのか考えるために、男の初体験の相手の女性を「「恋愛」の有無と、「再生産責任」(妊娠した場合に男が責任を取る立場にいるかどうかというファクター)の有無」(19)に基づいて以下のように分類する。

  • 娼婦(初体験時に恋人であることはあまりない・男の「再生産責任」免除)
  • 素人女性(男の「再生産責任」あいまい)
  • 恋人(恋愛がある・男の「再生産責任」あいまい)
  • 妻(恋愛がありうる・男の再生産責任あり)