1-4 初体験において性交そのものよりも難しいこと



筆者は高橋留美子めぞん一刻』と、ちばてつやのたり松太郎』を通し、物語の中での「性」描写の難しさを解説したのち、三木卓『ミッドワイフの家』を引き、童貞にとって「性行為そのもの以上にむずかしいのは、こういう際にどういうコミュニケーションを行えばいいのかということなのである」と述べる。また、「六十年代以降、西洋から日本に伝わった「性の解放」は、コンドームの普及と相まって一定の男女に「自由なセックス」を与えたが、「いない歴」が年齢と同じであるような「もてない男女」にとっては、ひたすら拡大された不安感と孤独感を増幅する効果をもたらしたに過ぎない」(33)としている。