感想/意見:まえがき&第一回 童貞であることの不安―童貞論



本書にたいしての感想や意見を述べていくにあたって、わたしは基本的に自分の体験に即して発言しようと思う。そうしないとつまらないからである。まず「もてない男」の定義、この点についての理解は大切である。本書を読むうえで、問題となっているのは、「理想が高く、得恋できず(失恋ばかりしており)、「好きでもない女」とはセックスしているかもしれない男」だ。「ほんとうに、救いがたく、容姿とか性格のためにまるで女性に相手にしてもらえない男」は問題とされていない。


初体験への恐怖ということを考えてみる。わたしが童貞を失ったのは今から6年前だったのだが、恐怖感はあまりなかった。ただし、かなり緊張していた。もちろんコンドームを装着して、挿入を試みたのだが、二人とも初心者だったので、なかなか難しく、小生は挿入する前に勢いあまってつい射精してしまった。実はコンドームを装着するのも難しく、幾つかだめにしている。相手は当時つきあっていたガールフレンドであり、場所は彼女の自宅の部屋だった。それまでペッティングはしばしば行っていたが、大好きな相手の内部に入ることができるということと、裸で抱き合えるということの感動は大きかった。性的な満足感というのはその後、定期的にセックスすることができるようになってから感じられるようになった。最初は性的な満足感というよりも、「おおセックスとはこういうことなのか」という驚きが多かったように思う。相手も最初は性的な満足感を得ていなかったようだし、実際少し痛みがあると言っていた。


今自分が書いてみたことから「いざやってみるとセックスは大したものではなかった」という初体験についての感想がある、ということについて思いを馳せると、ひとは必ずしもその初体験についての感想をそのまま述べるとは限らないということが考えられる。むろんその記憶そのものが編集や美化を経ているから、構造的に「そのまま」述べられないということもあるし、きわめて個人的であると理解されている体験である童貞喪失をそのまま口に出したくない、という気持ちが働いているからでもあるだろう。わたしの中にもそれはある。端的に、高校生だったころ、童貞を喪失した事実を述べたが、なぜかその記述に違和感を感じる。「初体験」を神聖なものとして己が内に留めて置きたいという気持ちが働いているのかもしれない。


などと書いてきて、わたしはこの本自体についての感想や意見ではなくて、自分自身の「童貞喪失」について語りたい欲望にドライブされてきた自分に気づいた。これはどうも妙な感じであるが、まだまだ先は長い(本書は全7回で完結する)のでこのあたりでとりあえず終わることにする。