3-6 その人でなければならない理由、そして男はみなマザコンである



筆者は大澤真幸の『恋愛の不可能性について』の議論を紹介しながら、「知的な思考実験の趣があってさほど実践的ではない」とし、「現実には人間はそんなに「条件」の揃った異性に会えるわけではないので」、「何度か会っているうちに好きになってしま」ったりして、「数多くの美人でもない女性が結婚できるのである」(97)が、妥協できない人間の数は「着実に増えている」(98)としている。また、筆者は吉本隆明の「男が結婚するのは母の代わりを求めているのだ」という発言に賛意を示し、「「その女性をその女性としての固有性のままに愛すること」なんてきれいごとを言う奴もいるが、無理である」として、男は「最終的には母の身代わりを女に求めているのである」と結論して、この章を終える。