5-1「正妻」と「妾」の違い(126〜129)



筆者は夏目漱石『それから』を引き、「現代の感覚からすれば、「妾」の機能は「妻」と変わらない。ならば、妾として置くような女性があるなら、その女性と結婚すればいいではないか、というのが現代の通常の感覚である」と述べた後、「「正妻」と「妾」の間には、(幸いにも?)現代人の意識からは失われてしまった違いがある」と指摘する。それは『それから』の主人公「代助が「妾を置く」と言うとき、彼はその「妾」が」「「愛情」のような面倒な義務を負わない、セックスと身の回りの世話を金銭の見返りに行う女性、なおかつ、世間に対して、自分がその女性に対し人格的な尊敬の念を持っていないということをはっきりさせておける存在として考えている」という点である。